研究課題/領域番号 |
15K01177
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
梶川 義幸 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 上級研究員 (20572431)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 気候変動 / モンスーン / 東シナ海 / 南シナ海 / 海面水温 / 大気海洋相互作用 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、衛星データ、客観解析データを用いて東シナ海/南シナ海における海面水温変動特性とそれに伴うモンスーンの変動を明らかにし、その成果を国際会議にて発表し、国際誌への論文投稿を準備中である。研究対象領域における海面水温変動は大陸に沿った北緯20度から35度、東経120度から130度の領域において、北半球の春季に最も大きくなり、1979年から近年(2012年)にかけて上昇傾向にあることがわかった。この海面水温の上昇傾向は気候学的に存在する東西方向の温度傾度を弱める方向に寄与するが、エルニーニョや数十年規模変動に代表されるような太平洋広領域の海面水温変動とは関係が弱く、東シナ海/南シナ海に限定された変動であることが確認された。この海面水温の上昇傾向には季節性があり北半球冬季に始まり北半球春季にピークを迎える。本研究では、海面水温の上昇傾向には冬季アジアモンスーンである弱化との関係が示唆された。つまり海面上の気候学的な北東風が弱まることで、海面付近の蒸発と極域からの冷たい海水の移流を抑制することで、海面水温の上昇を引き起こしていると考察された。この海面水温偏差は気候学的な風向が北東風から南西風に変わることで終了していることからも、大気海洋相互作用の結果として生じていることが示唆される。一方、北半球の春季にピークを迎える海面水温偏差と、それによって生じる東シナ海/南シナ海における東西方向の海面水温傾度と、中国南東部における6月降水量の増加と深い関係が示された。これは、Toy and Johnson (2014) が事例解析として示したメカニズムと同様であると考えられ、Kajikawa et al (2012) で示したアジアモンスーン域における降水量の長期変動の一部を説明しうる過程であると言える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本を含む東アジアの気候と対流活動の活発な西部太平洋の気候を繋ぐ、東シナ海/南シナ海の役割の解明を目指して、冬季アジアモンスーンと夏季アジアモンスーンを繋ぐ役割を持つと予想された東シナ海/南シナ海の役割を、衛星データ・客観解析データを用いた解析から示すことを達成し、研究の道筋を付けることができた。解析結果は「研究実績の概要」に記した通りである。国際会議で発表した解析結果について、論文として取り纏め国際誌に投稿する準備も完了しており、研究全体としては概ね順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降も、研究計画に沿って研究を進める。平成27年度に得られた解析結果について更にデータ解析を進め、東シナ海/南シナ海の海面水温変動と冬季/夏季アジアモンスーンとの関係について更なる物理プロセスを明らかにすると共に、夏季アジアモンスーンの降水だけでなく、アジアモンスーンの開始期についても解析を進める。同時に、国際的な全球モデル研究の枠組みである、大気モデル相互比較実験(AMIP)公開されている世界中の研究機関で行われたモデル実験結果や、全球雲解像モデル(NICAM)のAMIP実験データを解析し、観測データから得られた結果である、東シナ海/南シナ海の海面水温と夏季アジアモンスーン変動の関係を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に購入予定であったデータ解析用サーバーならびにストレージについては、大容量の大気モデル相互比較実験(AMIP)データならびに、全球雲解像モデル(NICAM)のAMIP実験データの解析・保存のため購入を次年度に持ち越したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究計画通りの設備としてデータ解析用サーバー・ストレージを平成28年度に購入予定である。
|