研究課題/領域番号 |
15K01186
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
荒川 雅裕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70288794)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 製品・技術プラットフォーム / 工程設計 / 基本設計 / 部品・部品構造 / 多品種少量生産 / 多目的最適化 / 情報システム / データ構造 |
研究実績の概要 |
本研究ではグローバルな市場や製造拠点を対象に製品プラットフォームと技術プラットフォームを組み合わせ,多品種生産を効率的,経済的に行うための製品・製造設計の仕組みを提案する.具体的には下記の3テーマの研究により検討する:(1)市場製品の要求分析の結果から新製品の創作,(2)製品機能の視点と製造技術・機構技術の視点から部品・部品構造の組合せによる多品種製品の設計,(3)製造拠点と市場の特徴を考慮した製造現場の設計.平成27年度では以下の研究を行った. (1)について,(1-1)インターネット上の既存製品のレビュー情報を利用した市場要求の分析と(1-2) 市場要求の分析結果による製品の部品・部品構造の特徴の分析と新製品の設計法の開発を行った. (3)について,(3-1)作業者の多工程持ち作業に対する作業困難さを評価した作業順序決定法の開発と(3-2)混流・セル生産に対する高生産性を実現するための工程設計・設備レイアウト設計・部品配置設計の統合化と可視化システムの開発を行った. (1-1)では類似・既存製品の利用者のレビューをインターネットから収集し,そのデータから利用者が満足する製品の特徴を定量化し,高評価の機能を分析した.(1-2)では(1-1)の分析結果を製品の「機能」と「部品・部品構造」に関連付け,高評価の具体的な製品の部品や部品構造を抽出し,組合せることで製品の基本設計を行う仕組みを開発した. (3-1)では部品組み立て作業について,作業の困難さを製品の部品構造から定量的に評価し,困難さを最小化する部品組み立て順序を決定する数理モデルを構築し,実験により効果を検証した.(3-2)では混流生産に対する工程設計の数理モデルを構築し,シミュレーションから有効性を示した.セル生産の設備・部品配置の数理モデルを構築し,評価のための可視化システムを3Dゲーム開発ソフトを利用して構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では非常に広範囲にわたり,創造性を必要とする内容を対象とする.広範囲の研究分野にもかかわらず,(1)については当初の最終目標の50%,(3)については最終目標の80%ほどは到達していると判断できる.一方で,“仕組み”(基本となる計算方法,分析方法,システムなど)はほぼ完成しているが情報システム化には完成していない部分もある.他の製品設計への検証のため,次年度に情報システム化を進めるとともに,適用範囲を広めるために異なる製品に対する評価の検証が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は(1)市場製品の要求分析の結果から新製品の創作,(2)製品機能の視点と製造技術・機構技術の視点から部品・部品構造の組合せによる多品種製品の設計,(3)製造拠点と市場の特徴を考慮した生産ライン構築のための工程・作業設計,に関するテーマから構成される. 平成28年度以降では,(1)について,本年度に開発した製品設計の方法の情報システム化を行い,異種製品に関して開発した設計法の妥当性を検証する.さらに,新しい問題として,既存製品の利用者の意見や市場での対象製品の要求を収得する方法の開発が必要となった.このため,インターネットから,製品の関係する情報を収集し,分析する方法を検討する.具体的には,SNSなどの情報から製品名称や既存製品名を抽出し,要求される事項,満足な事項,さらに不満足な事項を分析し,製品の要求される特徴とともに評価の高い既存製品に関連付ける.これにより,本年度に開発した設計方法と組み合わせることで適用性の高い方法として構築する. (2)について,(1)の部品・部品構造のデータ構造を利用するとともに,製品の機能単位で具現化された製造技術や機構技術に定量的な評価を加えることで品質(Q),コスト(C),開発期間(D)の多目的問題として扱い,適切な製造技術や機構技術の選択するための多目的アルゴリズムを開発する. (3)については,混流・セル生産のための工程設計・設備レイアウト設計・部品配置設計とともに可視化を統合する情報システムを構築する.さらに,多品種生産において作業者とロボットの融合による柔軟に対応する工程設計・作業設計の方法を開発する.具体的には,簡易ロボットにより実現可能な作業を抽出するとともに作業方法を改良し,混流生産でもロボットと作業者の融合により,作業者の作業の易化と作業時間の削減を実現するライン設計の方法を開発する.そして,実機により,効果の検証を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は学内業務で学科代表を担当していたため,学内の会議への出席などのため,国際学会や国内学会に出席する機会がなく,旅費の利用がほとんどなかった.また,理論的な研究や情報システムの開発などを中心として行っていたため,また,実験ではこれまでに導入した装置の利用のみで済んだため,新しい実験装置の導入は必要なかった.今年度は,研究を発展させるため,新規の実験装置の導入や装置による検証が必要となっている.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では本年度の研究の発展と検証実験のため,以下の設備の購入を予定している. 研究テーマ(2)製品機能の視点と製造技術・機構技術の視点から部品・部品構造の組合せによる多品種製品の設計と(3)製造拠点と市場の特徴を考慮した製造現場の設計に関して,製品設計および工程設計のための数理モデルの構築と数値実験に利用するため,数値計算用コンピュータと数理解析ソフトウェアが必要である.研究テーマ(3)の作業者とロボットの協調による効率的な工程設計案の実験検証のため,ロボットハンド2台とロボット用治具作成用に3Dプリンター1台の購入を必要とする. また,研究成果の報告のため,日本経営工学会,日本機械学会などへの論文投稿とともに,国際学会のAPIEMS2016(台北)への学会発表を予定している.このため,論文投稿料4件,英文校正費4件,国外への国際学会の発表3名分の申請を予定している.
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