本研究は,(1)市場製品の要求分析の結果から新製品の創作,(2)製品機能の視点と製造技術・機構技術の視点から部品・部品構造の組合せによる多品種製品の設計,(3)製造拠点と市場の特徴を考慮した生産ライン構築のための工程・作業設計,に関するテーマから構成される.本年度では,主に(1)と(3)についてまとめたのでその成果を報告する。 (1)について,前年度に開発した市場の製品の要求機能の分析から新製品を創作するしくみを拡張し,利用に関するサービスを組み込むことで製品価値を高める製品を創造する方法を開発した.提案方法は,類似製品についてWeb上の情報を集め,情報の文書解析からを行うことでポジティブな表現のキーワードと関連する動詞を調べるとともに,ネガティブな情報を調べることで,市場に受け入れやすい機能と利用方法を分析するしくみを開発した。さらに,利用者と企業間の情報交換を行うサービスを組み込むことで,製品とサービスの組み合わせによる付加価値の高い製品を創造するための意思決定のプロセスの方法を提案した. (3)については,製品の部品構造から,部品の組み立て順序を決定する数理モデルを構築した.部品の構造から,組み立て作業において生じる作業の困難さを障害物の配置や中間製品の不安定さによって評価することで作業を容易にする部品組み立て順序を決定できる.部品の構造はCAD情報から獲得できるため,多様な製品に適用することができ,製品設計段階で作業設計を同時に行うことができる.そして,需要の変動や,材料や部品供給の変動に対して,欠品を起こさせず,生産性を高めるために平準化の工程設計を短時間で算出するアルゴリズムを開発した.また,需要の見込み量に対する複数拠点への製品供給に対して,安全在庫を考慮して配送先を選定することで移動経路を削減するためのアルゴリズムを開発し,数値実験によって有効を示した.
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