研究課題/領域番号 |
15K01195
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中島 義裕 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40336798)
|
研究分担者 |
森 直樹 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90295717)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 人工市場 / ディープラーニング / 高頻度アルゴリズム取引 |
研究実績の概要 |
本研究では、高頻度アルゴリズム取引(HFT)が証券市場にどのような影響を及ぼしたのかを明らかにするため、アルゴリズムと人間の反応速度の違いに着目し、(1)オーダーフローの実証分析、(2)人工市場によるシミュレーション、(3)人間を含めた市場実験を行っている。実証分析ではHFTがまだ参加していない2007年、HFTのシェアが10%から20%と推測される2010年、50%を超えたと考えられる2012年のデータを比較する。本年は、特にディープラーニングによる2007年と2012年データの分類を行った。特に、ディープラーニングではGPUによる計算が有効であるため、分析用のPCを購入したほか、既存のPCに搭載するGPUを購入し設置した。Chainerを中心とした環境整備を行うとともに、データ加工や分析をバッチ処理するツールを作成した。実証データを用いて初歩的な分析による特徴量の抽出などを行った。ディープラーニングを用いてHFTの影響を調べるため、株価データから参加する投資家の性質を抽出する研究を行った。人工市場上で複数の投資アルゴリズムを混在させたときに生じる株価データから元の投資家の組成を推定する学習を行った上で現実のデータを分類した。投資家の組成を推定するという逆問題について、ディープラーニングがようよう可能であることを示した。内部状態により行動が変化する投資家によるシミュレーション研究を行い、より複雑な環境で生じる事象についても研究した。特に、HFTのアルゴリズム再現に向けて遺伝的アルゴリズムを用いて投資戦略を抽出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり、それまでに得られた知見を元に、新規アルゴリズムの開発と、その構成比率を変えたシミュレーションを実施して、それが株価変動に与える影響を調べた。特に当初より構想されていた機械学習の利用について、ディープラーニングが申請時に予想していた以上に注目され、それと共に多くの応用研究が報告されている。また、ハードとソフトの両面での発展が著しく、実施が容易になっている。平成28年は、こうした動きに合わせてディープラーニングの利用に注力した。このような機械学習の利用においては、当初計画よりも進んでいる。またデータの事前加工が必要であり、また、計算資源も必要になるオーダーフローのディープラーニングによる分析の準備も整いつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、当初の予定通り実証分析と人工市場による再現を相互に実施しながらオーダーフローなども焦点をあて、研究を進める。また、人工市場において投資アルゴリズムのみならず制度や規則の変化が株価変動に与える影響を調べる。この影響評価においても、ディープラーニングを積極的に用いる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ディープラーニングを本格利用するにあたって、計算機の充実が急務であった。 計算環境を整えるためには高額なGPUを必要とする。今年度は、試行的に研究を行うため、既存のPCなどを活用し低性能のGPUを追加するなどし、平成29年度に本格的な計算環境を整えるため予算を残した。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、上記の高性能な計算環境を整えるほか論文校閲や論文投稿、学会発表など研究成果を公表する。
|