本研究では、高頻度アルゴリズム取引(HFT)が証券市場にどのような影響を及ぼしたのかを明らかにするため、アルゴリズムと人間の 反応速度の違いに着目し、(1)オーダーフローの実証分析、(2)人工市場によるシミュレーションを行なった。実証分析ではHFTがまだ参加していない2007年、HFTのシェアと10%から20%と推測される2010年のデータを比較した。本年は、特にディープラーニングによる2007年と2012年データの分類を行った。特に、ディープラーニングで はGPUによる計算が有効であるため、分析用のPCを購入したほか、既存のPCに搭載するGPUを購入し設置した。Chainerを中心とした環境整備を行うとともに、データ加工や分析をバッチ処理するツールを作成した。実証データを用いて初歩的な分析による特徴量の抽出 などを行った。ディープラーニングを用いてHFTの影響を調べるため、株価データから参加する投資家の性質を抽出する研究を行った 。人工市場上で複数の投資アルゴリズムを混在させたときに生じる株価データから元の投資家の組成を推定する学習を行った上で現実のデータを分類した。投資家の組成を推定するという逆問題について、ディープラーニングが応用可能であることを示した。内部状態により行動が変化する投資家によるシミュレーション研究を行い、より複雑な環境で生じる事象についても研究した。機械学習による株価分析の可能性を広げるため、Support Vector Machine、Multi-Layer Perceptron、Recurrent Neural Networks、Long Short-Term Memory、Convolutional Neural Networkの4つに学習方法を用いて株価変動を学習し、その予測精度を比較した。
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