環境問題を継続して推進するためには,環境保全の活動に経済的優位性を高める仕組みが必要である.本研究は,経済性を考慮した「リバースサプライチェーン(Reverse supply chain: RSC)」の動的な運用方法について提案を行う.ここでは,再製造企業が再生部品の需要の変動を考慮して,消費者の製品の廃棄を抑制または促進する方法「Pull型RSCモデル」を提案し,その経済性評価と実験的検証を行う.また,進化型計算手法を用いた分解・再生スケジュールの動的最適化手法を提案し,その有効性を検証する.さらに,使用済み製品(二次電池)のエージェント化による実証実験を行い,新たな環境ビジネスモデルの創出に貢献したいと考えている. これまでの研究では,二次電池のリユースを想定したリバースサプライチェーンのプロトタイプシステムを構築し,実証実験の可能性について検討した.平成30年度は,二次電池のリユース時における残存価値の差異を考慮し,リユース計画を動的に修正する手法を提案した.さらに,計算機実験により,残存価値に差異がある場合でも,各企業の損益に不具合が生じないことを検証した.また,進化型計算手法を用いた分解・再生スケジューリングアルゴリズムでは,階層型遺伝子モデルの新たなコーディング手法を開発した.これにより,既存の手法と比較して,使用済み製品の分解・再生に要する時間をより短縮することができることを計算機実験により検証した. 本研究は,環境負荷の低減と企業利益の向上を同時に目指している.ここでは,二次電池のリユースに着目したが,本研究のアプローチは全ての製品に対して適用できると考えている.この研究アプローチが,製品単体を売る従来のビジネスモデルからの脱却を促し,製品とサービスを一体化することで顧客満足度を継続的に高める新たな環境ビジネスモデルの創出に貢献できることを期待している.
|