鉄道において,人身事故や災害など,長時間に渡る運転中止を伴う支障が発生した場合には,折り返し運転を含むダイヤの変更(「運転整理」と呼ぶ)を行ない,利用者になるべく迷惑がかからないようにする。事故発生時には,利用者になるべく迷惑をかけない良好な運転整理を行なうことが社会から強く求められている。 良好な運転整理が行なえるかどうかは,折り返し可能な番線を有する駅の位置をはじめとする線路設備,列車ダイヤを含む運行計画,運転整理を行なう指令員の技量などの条件に依存する。 本研究では,長時間の運転支障が発生した場合でも良好な運転整理ができるようにすることを目的として,列車ダイヤを含む運行計画を最適化することを考える(筆者らは,これを「強靭な運行計画」と呼ぶ。また,この性質を,強靭性,resilienceと呼ぶ)。すなわち,与えられた線路設備の条件のもとで,運転整理のしやすいダイヤを生成するアルゴリズムを混合整数計画法によって確立することを目的とする。ここで,筆者らのアイディアとして,運転整理としては,best effortを仮定することとして,最適化アルゴリズムを適用できるようにする。また,事故の発生については,過去の事例から,事前に場所,復旧までの時間が確率的にわかっている(これをシナリオと呼ぶ)とする。 今年度は,昨年度までに開発したアルゴリズムに対して,シナリオの数,列車本数等を増やし,かつ,処理速度の向上を行なった。合わせて,実用規模のテストケースに対して,数値実験を行ない,有用性を確認した。
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