研究実績の概要 |
株式市場において、様々な銘柄の収益率の間には、さまざまな相関構造があることが知られている。また、同一銘柄のdaytime returnとovernight returnの間の相関についても、アメリカ市場や台湾市場で特徴的な相関構造があることがすでに発見されている。今回、我々は日本市場でこの相関構造を解析した。 2つの変量の関係を調べる時、通常はピアソン相関係数(Pearsonproduct-moment correlation coefficient)が用いられることが多い。ところが、通常の相関係数では、相関の有無はわかっても、その方向性まではわからない。つまり時系列データA,B に対して、相関係数Cor(A,B)と、Cor(B,A)では同じ値をとるために、A とB のどちらが制御側で、どちらが被制御側かはわからない。そこで、これまでにVolatility-Constrained-Correlation(VC-correlation)と呼ぶ新しいタイプの相関を計測する手法を開発してきた。このVC-correlationを用いることにより、2つの要素A,B の間の相関のみならず因果の方向性まで検出することができるようになった。 今年度は、日経平均構成銘柄のdaytime returnとovernight returnの間の相関構造を様々な方法を用いて解析した。特に我々の開発したVC-coorelationを用いた解析では、通常の相関係数ではわからない特徴的な相関構造があることを見出した。この結果は現在論文としてまとめているところである。
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