研究課題
株式市場などの金融ネットワークは多くのノード(企業など)からなる大規模ネットワークとみなすことができる。ネットワーク上の最大支配集合(Minimum Dominating Set)の密度は、そのネットワークをコントロールするのにどれくらいのノードを支配すればよいのかを測る重要な指標である。このMDSの密度を統計力学で用いられるCavity Methodを用いて解析的に求めることに成功した。今回導出した解析的な公式と、シミュレーション結果は非常によく一致しており、解析解の有用性を示している。これにより株式市場などの多くのノードがある金融ネットワークに対して、金融危機などのショックの際にどれくらいのノード(金融機関などの支配ノード)を救済すればよいのかを見積もることが出来るようになると期待される。金融市場の影響伝播の方向性を計測するVolatility Constrained Correlationは、米国株式市場、日本株式市場、為替市場の間の影響の方向性を計測するために我々が開発した。この計量は、2つの時系列データにおいて、それぞれの時系列の標準偏差を閾値でフィルターすることにより、2つの市場の影響の伝播の方向性を測る手法である。これにより、市場の価格時系列データを用いて市場間の影響の方向性を決定することができる。今回、この金融市場向けに開発したVolatility Constrained Correlationが、他の分野(生命科学の遺伝子発現)の時系列データーにも応用可能であることを示し、この計量が大きな汎用性がもつ良い計量であることを実証した。
2: おおむね順調に進展している
金融ネットワークの構造を知るうえで重要な最小支配集合の密度を求める解析的な公式を導出することに成功した。またVolatility Constrained Correlationを他分野にも応用可能なことを示した。研究は順調に進展している。
今後の研究として、最近急激に発展している深層学習をはじめとする人工知能技術を新たに取り入れて、金融データの解析をしていきたい。
今後、人工知能の手法として脚光を浴びている深層学習などの機械学習の手法を研究に導入する予定である。そのために深層学習用のハードウェアを今後購入するために次年度使用額が生じた。
深層学習用のハードウェアを購入する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
International Journal of Modeling, Simulation, and Scientific Computing
巻: 08 ページ: 1750005(1-16)
http://dx.doi.org/10.1142/S1793962317500052
Biosystems
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