研究課題/領域番号 |
15K01201
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
枇々木 規雄 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30245609)
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研究分担者 |
今井 潤一 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (10293078)
山本 零 武蔵大学, 経済学部, 准教授 (40756376)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 資産運用 / 多期間最適化 / ペアトレーディング戦略 |
研究実績の概要 |
各テーマごとに記述する。 1. 多期間最適化モデル: 退職後の家計を対象とし、私的年金、生命保険、資産配分、消費計画を考慮した多期間リタイアメントプランニングモデルを開発し、数値分析も行った。一方、以前から行っていた研究であるが、資産運用の際に実務で必要な売買執行を行うための多期間最適執行戦略モデルに関する研究として、下方リスクを考慮したモデルに関する論文が査読付き論文として掲載された。2016年度はさらにその論文を改善するために、過渡的インパクトを考慮した成行注文戦略モデルの研究を行った。今年度に行ったこれら2件の研究内容を2017年12月の国際学会で発表予定である。また、未執行リスクや価格インパクトを考慮した指値注文戦略モデルの研究も行い、2017年度中に投稿を目指している。 2. DFOモデル: 複数ペアを同時に取り扱うことが可能な最適ペアトレード戦略モデルについて、論文を執筆し、2016年7月の国際会議で発表した。この論文を日本OR学会の英文誌に投稿した結果、アクセプトされ、2017年度中に掲載予定である。また、下方リスク尺度を用いたテールリスクパリティ戦略を導出するために、DFOを用いて解くことができる最適化モデルも構築した。2017年5月の国内学会および2017年12月の国際学会で発表予定である。 3. モンテカルロ法による収益率シナリオの生成 株式オプションから実分布を推定する方法である Recovery Theorem (RT) について、さらに研究を進め、再投稿した。また、RT を一般化した Generalized RT を用いた実分布の推定方法も研究した。その内容を2016年2月および3月に国内学会で発表した。さらに、2017年12月の国際学会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多期間モデルに関しては、リタイアメントプランニングや最適執行戦略に対する多期間モデルへの応用を昨年度に引き続き、進行中である。 DFOモデルに関しては、基本ポートフォリオと乖離許容幅を同時に決定できる最適化モデルの研究が進まなかったため「遅れている」と評価せざるを得ないが、複数ペアに対するペアトレード戦略モデルに関する研究を行い、論文としてまとめることができた。現在、その論文をもとに、バックテストも含めた実データによる検証を行う準備中である。このテーマについては「当初の計画通りに進んでいる」と評価できる。 収益率シナリオの生成方法に関しては、Recovery Theorem (RT)を用いて推定した資産価格分布の予測力の検証を行っているところである。また、応用研究までは進展していないが、多期間モデルに応用可能な基礎研究として、Generalized RT (GRT) の研究を始めている。RT, GRT ともにフォワードルッキングなインプライド分布に関する研究であり、応用可能性は高いと考えている。 したがって、最初の予定とは少し異なる部分があるのと、テーマによって進捗状況に違いはあるが、平均すると、おおむね順調に進展していると評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は計画最終年であり、今までの研究成果をまとめるとともに、多期間最適執行戦略モデルや多期間リタイアメントプランニングモデルの研究に関して、研究を進め、論文を完成させて、査読雑誌に投稿したい。 DFOモデルに関しては大幅に進行が遅れている基本ポートフォリオと乖離許容幅の同時決定モデルの研究を推進する一方、順調に進んでいる最適ペアトレード戦略モデルに関する研究についてはバックテストも含めた実データによる検証を進めたい。 収益率シナリオの生成方法に関しては、Recovery Theorem (RT)、Generalized RT (GRT) ともに進行中の研究をまとめて、応用研究に近づけるように進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な原因は学生アルバイトの雇用をせずに人件費を計上しなかったことと、研究責任者が海外学会への出張を予定していたが行くことができずに、計上しなかったことによるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通りに使用することを予定しているが、次年度である平成29年度の直接経費のうち、研究分担者が予定していた金額以上を使用する計画を立てており、その不足分は「次年度使用額」から支出する予定である。
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