過年度に引き続き、複数のトピックについて並列的に進めた。まずは過年度からの継続テーマである、分布的ロバスト最適化モデルのハイパーパラメータとその最適解の事後パフォーマンスの関係について、海外の共同研究者との研究を進めた。以下に具体的に説明する。未知の確率分布を持つ確率変数によって定義される期待利得最大化問題に対し、現実には経験的な分布の情報からの推定に基づく最適化を行う必要があるが、ロバスト最適化ではその推定がある意味で最も不都合なケースに対して最適化を行う。そのときロバスト性の程度を規定するパラメータが小さいとき、収益率の期待値の増加よりも収益率の分散の減少がより大きくなることを、事後的なふるまいの観点からも言えることを示した。この論文は前年度終盤に国際学術論文誌へ投稿しており、昨年6月に大幅改訂後再査読(相当)の査読結果を得、昨年度はその改訂を進めた。特に、夏には数理最適化に関する最大の会議であるISMPにて当該論文の内容について口頭発表を行いフィードバックを得、また、中盤と終盤には研究代表者と共同研究者がそれぞれ互いの勤務先に出向き、数日間集中的に改訂に向けた議論を進めた。その結果として、分散に関する項は機械学習における標準的な正則化とは必ずしも一致しないことなどの知見を得た。(当該論文の改訂については年度が代わった現在も続けている。)なお、過年度に投稿や改訂を繰り返した事前のふるまいに関する論文が昨年度採択・出版された。 また、修士論文指導の一環として、指導学生にテーマとして与える形で、スパース復元問題に対する反復解法の数値実験、および、ISMPにて講演を聞いた凸包を用いた協調フィルタリング、ロバスト性を考慮したDEAなどの予備的な実験を行い、将来的な発展に向けた知見を得た。このうちはじめのスパース復元のテーマについてはその途中結果を国内学会で報告を行った。
|