研究実績の概要 |
甚大な被害を及ぼす事象は, 異常に大きな, あるいは小さなデータが観測されるケースで発生する. 異常に大きな(小さな)データは稀にしか起こらない事象と結びついており, 通常用いられる統計手法では歯が立たない. このような極値データを扱う極値統計では, 極値理論に基づき, 一般化極値分布(GEV)と一般化パレート分布(GPD)を用いて統一的に議論を進める試みがなされている. しかし, これらは, ”非正則分布”と呼ばれる特異性を持つ分布で, 正則条件が破綻している. そのため, ある限られたパラメータ範囲でした, 各種モーメント, 及び尤度関数が存在しない. さらに, 最尤推定における漸近理論が破綻しているために, 区間推定法や仮説検定法のベースとなる各種理論体系の構築も行われていない. よって, 仮説検定や区間推定の体系的な方法論も構築されていない.
本年度は, 一般化パレート分布(GPD)において, 本課題で提案した推定量の漸近正規性について, 定理化を行い、厳密な証明を与えた。 更に、この結果に基づく信頼区間を提案した。また、bootstrap法についても検討を行った。これによって、区間推定の体系的な方法論の礎となる結果を得られたといえる。しかし、提案信頼区間のAccuracyとPrecisionについては、モンテカルロシミュレーションと数理的導出との両面で進めていく必要がある。また、統計的仮説検定の体系的な方法論の構築も今後進めていく。
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