研究課題/領域番号 |
15K01210
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤村 茂 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00367179)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 生産スケジューリング / 業務プロセス / 生産プロセス / カイゼン / スパイラル進化 / 実績収集 / Internet of Things / インダストリー4.0 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,業務および生産プロセスの改善と同期してスパイラル進化可能な業務・生産スケジューリングシステムを提案し評価を行うことを目的としている.スパイラル進化とは,変化,変化に対する問題点の発見,発見された問題点の改善,そして更なる変化というスパイラルに同期してシステムを進化させていく概念である. 本年度は,2つの課題(1)実績収集機能の拡張,(2)実績収集機能の実プロセスでの評価を実施した. (1)については,iBeaconを利用した作業者の動線の解析,複数バーコードの同時読み取り機能による在庫管理機能を効率化する手法,作業者が入力した作業日誌からのデータマイニングを行い解析作業を簡易化する手法などの実績入力補助機能などを実現するための基盤技術の検討を実施した.当初の目標より広範囲な手法について検討を実施したため多くの時間を割いたが,実利用に向けて大きな進展があったといえる. (2)については,当初多くのプロセスでの利用を考えていたが,プロセス固有の環境の違いがあるために,対象プロセスの選択が難しかった.そのために,より広範囲のプロセスでの可能性を探るために,電気学会での委員会「日本型インダストリー4.0実証検討協同研究委員会」を立ち上げる準備を進めてきた.この委員会では実際にシステムを利用してもらい,その評価をワーキンググループ単位で実施することを計画している.本委員会は2016年6月に立ち上がることが確定しており,現在他分野からの参加者を募っているところである.2年間活動を実施し,実プロセスでの評価を加速していく予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,3つの課題(1)実績収集機能の拡張,(2)実績収集機能の実プロセスでの評価,(3)改善のための実績分析機能を解決することを目標としていたが,実績収集機能の拡張として様々なデバイス,手法の利用の検討が必要となり,(1)を中心に注力した.そのため,(3)については来年度実施することとした.しかし,(1)の拡張については様々なセンサの利用,ビッグデータの扱いについて検討を行ったため,今後,広範囲のプロセスに適用することが期待される.また,(2)についてもこれらの基盤技術の応用を広範囲のプロセスに適用し検討を行う枠組みを準備することができたために,全体のスケジュールとしては大きな遅れは生じていないと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,以下の内容を実施することを予定している. (1)改善のための実績分析機能の実現 数値実績,作業実績,作業員の動線からのものの流れの解析手法を提案する.具体的には,作業実績と原材料投入,製品取り出しの数値実績をグラフィカルな操作で関連付ける環境を用意し,生産作業によるものの流れ,ピッキングや在庫移動によるものの流れと作業員の動き,問題点の因果関係を見える化する機能を実現する.これらの情報から業務・生産プロセスの問題点を検出するための支援機能を実現し改善に役立てる手法を提案する.これらの手法については,実プロセスで収集した実績情報を基に検討を行う. (2)スケジューリングマスタ情報のスパイラル進化支援機能の実現 本申請は,見える化により,業務・生産プロセス改善を実施し,簡略化したスケジューリング方法からスタートし,スパイラル進化可能な業務・生産スケジューリングシステムを検討することである.スパイラル進化の過程として,以下の状況を想定している.実績として収集する情報は,作業者の実作業の妨げにならないようにしつつ,できるだけ詳細な実績情報とし,それらの分析によって問題点を発見し改善を行う.変化が激しく,整理されていない業務・生産プロセスの場合,改善を繰り返すことによって,業務・生産プロセスは,徐々に単純化されていく.一方,スケジューリング方法は簡略化したものからスタートし,徐々に精度を高めるために詳細なものに変化させていくものとする.そこで,マスタ情報(生産作業およびピッキングやものの移動作業)の設定のためには,まず,詳細な実績情報から単純なマスタ情報を生成する.そして,より単純化されていく業務・生産プロセスに従って実績情報の収集も簡略化してくる.改善された業務・生産プロセスにより適切なマスタ情報に進化することを想定し,このような過程を支援する仕組みを構築する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた携帯端末,システム構築用のGPU搭載PCは,実プロセスでの評価が遅延したため,現在保有している資産を利用することで対応できたために購入しなかった.
|
次年度使用額の使用計画 |
物品費:昨年度実施が十分できなかった実プロセスでの評価および実績分析機能の実現は,今年度実施することを予定しいる.そのため,当初昨年度購入する予定であった携帯端末およびGPU搭載PCを購入することを予定している. 旅費:実プロセスでの評価のための国内旅費と国際会議発表(インドネシア)用の旅費を予定している. 人件費:企業のでのヒアリング情報の記録,Webでの委員会活動内容公開およびシステム評価促進のための技術公開の補助のための人件費を予定している.
|