本研究課題は,生産業務および生産プロセスの改善活動と同期したスパイラル進化可能な生産スケジューリングシステムを提案することを目的としている.スパイラル進化とは,システム導入後の生産業務・プロセスの改善活動による生産をとりまく環境の変化に対して,システムが逐次システム自身も変化して適合していく仕組みである.従来の生産スケジューリングシステムは,個々の生産プロセスに特化した形で導入されてきたが,本システムは,単純な機能から利用を開始し,徐々に変化していく仕組みを導入し,初期導入およびメンテナンスを容易にする. 本年度は,昨年度から引き続き,作業者の視線,動線の変化をとらえ作業者の作業のカイゼンに役立てる方法について検討を実施した.視線の変化については,実際の製造プロセスの作業者の動作・注目点の解析に利用し,動きの無駄を検出し,そのような作業のカイゼンによるスケジューリング方法の変化に対して,本システムが追従できることを検証した.加工工程,検査工程,梱包工程の実プロセスを対象に検証を実施した.動線の変化については,より精度の高い動線解析システムを実装するための手法を検討した.具体的には作業員の移動範囲を限定するデータベースを利用することにより処理速度を向上させる手法や,過去の移動実績情報を利用して移動経路認識精度を向上させる手法を検討し評価を行った.加速度センサーによる位置変化がないデータからの作業員の作業時の位置補正機能,過去移動軌跡からの位置予測機能により精度の向上を実現した.
|