研究課題/領域番号 |
15K01214
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
大石 尚子 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (20725361)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ソーシャル・イノベーション / 条件不利地域 / インキュベーション / 市民協働 / 社会的起業 / システミックイノベーション |
研究実績の概要 |
本年度は、1)Europe2020におけるソーシャル・イノベーション(以下SI)政策の全容解明のための調査研究、2)民間によるSIインキュベーション拠点の実態調査、3)海外研究者との協働調査の実施、4)研究会における調査報告、5)自治体における欧州SI推進拠点設置に向けた調査報告 を行った。それぞれの具体的内容は以下の通りである。 1)欧州連合(ブリュッセル)を訪問し、SI政策に関連する機関へのヒアリング調査を行った。また、SI研究機関Nesta(ヨーロッパにSI概念をもたらしSI政策を実装化させた)、Young Foundation(Nestaを創設し、ヨーロッパにおけるSI概念を確立させ、SI担い手育成といった教育機能を有するチャリティー団体)(イギリス・ロンドン)へのヒアリング調査を行った。これらの調査により、EUとしてのSI政策の全体像をとらえるべく情報収集することができ、今後の研究を発展させるうえで重要な研究者と協力を得らえる関係を築くことができた。2)民間によるSIインキュベーション拠点Impact Hubの発足から今日に至る軌跡と現状について現地訪問・ヒアリング調査を行った。 3)縮小都市再生に取り組むイタリア・トリノより空間計画の研究者を招聘し、日本の中山間地域におけるSIの動向について訪問調査を行った。また、トリノにおける空間計画の全容についての研究発表を行った。4)龍谷大学地域公共人材・政策開発研究センター(LORC)研究会において、EUにおけるソーシャル・イノベーションとEU政策についての発表を行い、研究協力者からの意見、今後の研究展開について助言をえることができた。5)米原市自治基本条例推進委員会にて、EUにおけるSI拠点の取組と実態について報告し、市民活動拠点設置提言に向けてのアイデア提供を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究テーマの重要要素であるソーシャル・イノベーション・ヨーロッパ(SIE)については EUにおけるSI推進のための基盤形成のため行われた2年間の事業であったため、終了していたが、SI政策自体はEU政策の中心テーマとして推進されているため、研究目的である「SI醸成のエコシステム構築を目指すEU政策の調査研究」としては問題なく遂行できている。 海外調査については、当初予定よりも進んでいる。特にEUにおけるヒアリング調査では、関連する部署の実務家から研究者まで、多角的な視点からの情報を得ることができ、EUの抱える課題とSI政策との関係性、EUレベル、国レベル、地方レベルでどのようにSI政策が取り扱われているのか、全体像をある程度把握することができた。 また、国内においては、自治体における住民自治の推進に向けた一つの提言に、EUにおけるSIインキュベーション拠点の概念を取り入れることができたのは一つの研究成果といえる。 一方、研究発表については、不十分である。論文執筆とともに、2017年度に成果発表を重点的に進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1)研究会の開催―海外研究協力者を招聘して日本で、あるいはEUにて調査発表を行い、2年間の調査研究で得た知見を総括するとともに、EUにおけるSI政策の全容を明らかにし、SI醸成のためのエコシステムのモデルを描く。 2)EU予算が入っているイタリア南部地域の調査を実施する。その際、イタリア北部におけるSI政策と比較し、新たな社会システム構築に必要な要素の抽出を試みる。 3)研究成果発表を行う。これまでに構築してきた研究者・実務家ネットワークを活用し、トリノ工科大/バーリ工科大など海外研究機関にて日本のSI現状報告を行う。また、国内学会発表、地方自治体への調査報告とSI拠点づくりの推進に努める。) 4)研究の集大成として、論文執筆投稿を行う。
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