研究課題/領域番号 |
15K01217
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
井上 寛康 兵庫県立大学, シミュレーション学研究科, 准教授 (60418499)
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研究分担者 |
齊藤 有希子 (梅野有希子) 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 上席研究員 (50543815)
中島 賢太郎 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (60507698)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サプライチェーン / レジリエンス / 災害 / ネットワーク / シミュレーション |
研究実績の概要 |
今年度は、実際の自然災害、特に地震を例にとり、その直接的な被害がサプライチェーンを通じてどのように間接的に広がっていき、また回復していくのかを、実際の日本の企業レベルのサプライチェーンデータを用い,ミクロなシミュレーションによって分析した。このテーマは経済学と政策の現場で近年大きな話題となっているが、多くの研究は産業連関表に代表される産業ごとのデータに依存している。一方で本研究は、最近の多くの論文と同様に企業レベルのモデルとデータを利用しているが、特に全企業のシミュレーションを大型の並列計算機(京コンピュータ)により行っているところが特徴的である。 東日本大震災の被害について、公表されているデータから企業レベルへの被害へ忠実に反映した上で、シミュレーションを行った。また、東日本大震災後のマクロな振る舞いとして鉱工業生産指数に着目し、その振る舞いを再現するようにしてモデルのパラメータを網羅的に推定した。そのパラメータを用いたシミュレーションの様子が図1および図2になる。 南海トラフ地震のサプライチェーンにおける直接的被害は、東日本大震災の約12倍と推定されたが、1年間の間接的被害の総和の推定値は4.5倍となった。単純に間接的被害も12倍とならない理由は、サプライチェーン上を被害が波及していく際に、その波及先企業の多くが共通しているためである。すなわちそのような重複がないならば線形的に被害は大きくなるが、重なっていることでその被害はある程度に抑えられる。この重複性は、サプライチェーンの特性、すなわち大きなハブがあること、それゆえに波及は著しく速く広がることと併せ、被害がドミノ的に広がるのを防ぐ意味では要衝となるような企業に重点的に予防を敷いておくことが、効率的な施策となりうる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
わずかではあるが遅延している.その理由は実績で述べた論文の査読が終了していないためである.その関係で課題年限を繰り越している.
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今後の研究の推進方策 |
予定された年限は終了しており,研究課題自体も終了しているが,論文が受理されるまでは本研究課題の継続とみて推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該課題に関する論文はまだ査読中であり,それが受理されたときに必要な掲載料を残したため.
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