本研究は移動体の安全な運航環境を実現するための環境条件とオペレータに求められる能力の関係を論理的に明らかにすると共に一般社会に対し、移動対操縦者の重要性を正しく認識させることを目的としている。本研究では船舶運航、特に複数の曳船を使用した着離桟操船を例に安全な船舶運航を達成するための必要条件および操縦者の特性分析を行った。研究期間は3年間である。 初年度は着離桟操船を行う操船者の操縦特性を調査するための計測システムの開発を行った。また、計測システムの性能評価を行い、本研究で目的とする特性分析が実施できることを確認した。 第2年次は初年度に作成した計測システムを用いた特性分析を実施すると共に操船者の知的負担を軽減し、確実かつ安全な着離桟操船を実現するための支援システムの設計を行った。支援システムの設計は操船者の特性分析に基づき、人間が担当すべき機能と機械が担当すべき機能を明確化させ進めた。特性分析の結果、次に述べる3つの情報処理が大きな負担となっていることが明らかとなり、その情報処理結果の精度が船体運動制御結果に大きく影響することが明らかとなった。1)2つ以上の運動を同時に制御すること、2)複数の曳船の操作量を同時決定すること、3)船体を停止させるための操作を開始する時期及びその操作量を決定すること 最終年度は基本設計に基づき必要機能を実現するために入力装置、制御力算出部及び意思決定を支援するための情報表示画面の作成を行った。また、支援システムを完成させると共にその有用性について検証実験を行った。 本研究において開発を行った支援システムを用いた場合、操船基準を確実に満足することが確認できた。さらに、操船が許可されない外力下においても操船基準を満足することが確認できた。
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