追従走行する車群3台を想定し,2台目の車両がその前後方向の車間距離と自車の速度を計測することで,全3台の車両の速度と車間距離を推定するシステムを開発した.推定には,主にアンセンティッドカルマンフィルタ(UKF)を用いた.推定された3台の車両状態量を伝統的な車両追従モデル(GHRモデル)に入力することで,3台目車両の1.5秒後の減速意図を予測する統合的なシステムを開発した. 平成28年度に,提案した減速意図予測システムの精度が高いことを明らかにし,平成29年度はこのシステムをドライビングシミュレータに実装し,被験者実験を通じてその支援効果を検証した.システムは,先行車が減速する1.5s前に,4台目車両のAピラーからウィンドシールドディスプレイを模擬した3種類の色で表されたバーが出現する.被験者は,その表示を視認することにより,先行車が減速するよりも1.5s前に減速の動作を開始することができるため,追突リスクの減少が期待される. 被験者運転実験では,4台目を被験者に運転させた.支援なしと支援ありを比較したところ,支援ありでは最大減速度が有意に低減し,衝突余裕時間も有意に増加し,追突リスクが顕著に低減したことを明らかにした.また,主観評価でも,支援の有用性が高いという結果を得た. 上記実験では,支援を受けた車両は4台目車両であったが,その後方5台目に支援を受けない車両を混入させ,5台目を被験者に運転させる実験も追加で行った.この結果,5台目車両は実際には支援を受けないものの,4台目車両が支援を受けることで5台目車両の追突リスクも有意に低減することを明らかにした.車群全体の追突リスクを低減させるには,必ずしも全ての車両が支援を受ける必要がないことが明らかとなった.この結果,多重追突事故防止を目指す運転支援のプロトタイプシステムを構築することができた.
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