地域における災害リスク情報を地図で示すため各自治体で作成されるハザードマップを、視覚障害者に提供するための伝達手段の研究開発を行った。開発にあたっては、今後に普及可能性の高い技術やデータを採用するとともに、当事者団体等からの意見聴取にもとづく利便性や、効果的な防災に資する有用性の観点などから検討を行った。 データ形式としては、視覚障害者における認知度、データ検索の利便性などからDAISYフォーマットを採用した。対象とする自然災害は、発生頻度や汎用性などから、土砂災害、浸水害および津波災害をとした。視覚障害者への提供するリスク情報は、自宅および訪問頻度の高い公共施設とした。自宅の災害リスクは世帯名称等ではなく町丁単位で表現した。公共施設は、役所や視覚障害関連福祉施設などの住所ととした。これらのリスクとして、津波及び外水氾濫での想定浸水深および土砂災害警戒区域内か否かとした。自然災害リスクや公共施設の情報としては、汎用性の観点から国土数値情報を採用した。これらのGISデータを用いた空間解析を行い、各町丁目の中心点および施設の属性データにリスク情報を付与したデータベースを作成した。そして、日本語音声合成エンジンによって機械的にDAISYフォーマットに準拠した音声版ハザードマップを作成した。 こうした視覚障害者用の音声版ハザードマップの仕様や制作過程数における課題、試用に基づく当事者団体からの意見聴取等にもとづき、実用化にむけた有用性と必要な改善事項を抽出、整理した。視覚障害者への音声読み上げのためには,公共施設等のGISデータ整備にあたっては、読み仮名が必要であるが十分に整備されていない。また、全国的な内水氾濫の想定氾濫区域データの社会的な集約の必要性、地域ごとの災害危険時の視覚障害者への行動指針について平常時の啓発内容と、災害危険時の伝達内容などの整理、周知の必要性などを整理した。
|