研究課題/領域番号 |
15K01249
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
米山 望 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90371492)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 津波 / 三次元数値解析 / 津波氾濫 / 河川遡上 / 塩水被害 / 河床変動 |
研究実績の概要 |
A)津波被害全体像予測モデルの開発 空気の影響を考慮するため解析モデルの改良を行った。具体的には、これまで液相のみを解析対象としていたモデルに、空気が閉空間に閉じ込められたときには、空気の挙動(流速、圧力)を解析できる機能を追加した。この際、閉じ込められない空気の領域はこれまで通り計算しないことで、計算時間の膨大化を押さえた。また、洗掘や流砂、堆積など流れによる河床等の変動を予測評価できる機能を解析モデルに追加し、その妥当性を定性的に確認した。 B)津波災害全体像予測モデルの検証と災害メカニズムの検討 開発したモデルを南海トラフ巨大地震発生時の津波河川遡上に伴う淀川大堰周辺の塩水遡上現象に適用した。その中で、まず、津波波源を含む広域の平面二次元解析と淀川大堰周辺の三次元塩分挙動解析を結合した解析を行いその妥当性を検証した。次に、大堰直上流に位置する浄水場の塩水被害の予測を行って、災害メカニズムを把握した上で、被害低減案を提案した。 また、開発したモデルを東日本大震災により女川町で発生した鉄筋コンクリート構造ビルの倒壊現象に適用した。その中で、まず、津波波源を含む広域の平面二次元解析と倒壊したビルを含む陸上部の三次元津波氾濫解析を結合した解析を行いその妥当性を検証した。次に、解析結果を踏まえて災害メカニズムの推定を行った.その結果、津波が来襲しただけでは、ビルの倒壊が起きず、杭の欠損や地盤の液状化が伴ったことによって倒壊が生じたと推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、空気の影響考慮や河床変動評価などの津波被害全体像予測モデルの改良、淀川大堰周辺域の塩水挙動や女川町での鉄筋コンクリート構造ビルの倒壊現象を対象とした、津波災害全体像予測モデルの検証とそれを用いた災害メカニズムの検討が実施できたため、概ね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
A)津波災害全体像予測モデルの検証と災害メカニズムの検討 開発した手法を、釜石市甲子川にかかる矢の浦水管橋の流出現象に適用し、津波波力解析、漂流解析および広域解析の3つを結合した解析の妥当性を確認する。この流失では、実際に流失が発生した時刻がわかっておらず、水管橋が沈んだ位置のみが把握されている。よって、本検証では、津波により水管橋が漂流を開始し、確認された位置に沈む現象を再現できるかどうかを対象とする。現象を適切に再現できた場合には、流失を防ぐために満たすべき条件について検討する。 B) 津波被害全体像予測モデルによる将来災害の予測 淀川を中心とした大阪府中心部での津波災害全体像の予測解析を行う。具体的には、南海トラフ巨大地震津波が発生した場合に大きな被害が予想されている「淀川堤外地およびその周辺」の津波挙動に、本予測モデルを適用する。河川を含む周辺領域を橋梁被害、氾濫被害、塩水被害を含めて、南海トラフ巨大地震想定波源を含む領域から解析を行い、被害の全体像を予測する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析を行う高性能計算サーバー及び関連する周辺機器を購入する予定であったが、今年度の研究を進めたところ、結果的に高性能な計算機が無くても実施可能であった。ただし、来年度は強力な計算サーバーが必要な津波被害全体像予測解析を複数地点を対象に行う予定であるため必ず必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度購入予定であった高性能計算サーバー及び関連する周辺機器を購入する。また、国際会議等で研究内容の発表を行うための旅費にも充当する。
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