積雪寒冷地においては、冬期地震が発生した場合、堆積雪や屋根雪による直接被害の拡大が予想される。さらに、積雪に伴う避難および救助・救急活動といった直後対応には多くの困難が伴う恐れがある。本研究は、過去の積雪期地震時の被災と対応の実態を解明し、積雪寒冷地の自然条件・社会条件を考慮した地震危険度評価手法の検討を行った。主な成果は以下の通り。研究計画初年度の平成27年度と2年目の平成28年度は、過去の豪雪地帯の積雪期(12月~3月)に発生した地震被害、太平洋側で発生する巨大地震での日本海側の雪国における地震被害について、各種被害報告、新聞記事などを収集・整理し、冬の地震、特に積雪下の地震防災を考える上で参照すべき被災事象、問題点を明らかにした。また、豪雪地帯横手市を中心とした秋田県内の住宅について、夏期と冬期、屋根の雪下ろし前後の住宅の振動特性実測調査を実施し、建物の卓越周期の変化を明らかにした。さらに、地盤・建物・道路データベースを構築し、マルチエージェント手法を導入して、屋根雪や堆積雪、建物倒壊の状況から、道路閉塞や避難行動をシミュレーションする被害想定モデルを新たに構築し提案した。最終年度は、自然条件として実測調査に基づく住宅の冬期振動特性の知見を加え、社会条件として避難行動や除雪などソフト面の対応も考慮した積雪寒冷地のための地震危険度評価手法を提案した。また、モデル都市として横手市を選び、横手市役所の危機管理課と消防本部の職員を交えた実証実験を行い、有効性を検討した。
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