研究課題/領域番号 |
15K01260
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
福山 泰治郎 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (60462511)
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研究分担者 |
平松 晋也 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (70294824)
小野 裕 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (00231241)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 火山噴出物 / 伊豆大島 / 表層崩壊 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は火山噴出物に覆われた地域における土砂災害リスクの評価手法を開発することである。そのために,火山噴出物が堆積した伊豆大島で平成25年10月に発生した表層崩壊を対象として,①未固結な火山噴出物が堆積した山腹斜面の崩壊メカニズムの解明と②大規模な斜面崩壊の発生メカニズムの解明を目指して取り組んできた。 現地踏査により,広範囲にわたる大規模な崩壊(大金沢流域)とともに谷筋に沿って多発した表層崩壊(八重南沢・大宮沢等)という異なる形態を持つ斜面崩壊が存在していることから,発生メカニズムを明らかにするためには,両者の土層における地形の違いとそれにともなう土層や水移動の違いを明らかにする必要性が認められた。大金沢は平滑な地形(尾根・谷の区別が不明瞭)であるのに対して,八重南沢等は谷が深く刻まれており,両者の地形には違いが見られる。平成25年10月の斜面崩壊発生に関して,地形以外の崩壊に関わる要因(地質・植生・降雨など)は2流域間で同様と考えられるが,崩壊の規模が明らかに異なっている。そこで,簡易貫入試験による土層構造調査,地形計測を行った。また,表層崩壊が発生した時,立木の根が互いに密に絡み合っているために,周囲の根系と表層土壌を巻き添えにして崩壊の面積が拡大したことも考えられたことから,まず斜面に生育している優占樹種の根系分布を調査した。その結果,最大で約80㎝まで伸長している状況が確認されたが,ほとんどの根系は地表下25㎝程度のごく表層に集中していた。また,現地調査と並行して,伊豆大島で採取した大型不攪乱土壌試料を用いて,室内散水実験を行い,地下水位の時間変化とそれにおよぼす透水性の異なる複数の火山灰層の影響を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
火山噴出物の堆積斜面である伊豆大島三原山西麓斜面において、著しく広大な面積の崩壊とともに,谷筋に沿って同時多発的に発生した斜面崩壊の発生形態の違いが生じた要因については,調査が端緒についた段階であり,地形計測と土層厚分布の調査にとどまっている。土層における水移動の解析や斜面安定解析には不攪乱土壌試料の採取が必要であるが,新たに調査地として選んだ流域も大金沢同様に国立公園内の特別地域に指定されており、土石の採取には許可申請が必要となる。H27年度中に土石の採取の許可申請を提出しているものの、手続きに時間を要し,まだ採取許可が得られていない。土石の採取許可が下りるまでの間に,地形計測等の現地踏査を優先して行っているものの,浸透流解析や斜面安定解析等の水移動・斜面崩壊の発生・非発生に関する解析には着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度に引き続き,土質特性(土質強度c, φ)、土壌中の水移動に関する特性(透水係数・間隙率・pF)、地形(勾配)、土層厚等,斜面安定に関わるデータを現地調査で得,雨水浸透過程と斜面の不安定化(崩壊発生)をシミュレートする。これと並行して,災害前後の詳細な地形データ(1 m DEM)を用いて,多地点を概観して傾向を見出すことで,崩壊発生・非発生と地形要因(斜面長・斜面形状等)の関係を調べる。以上のように,物理的なアプローチおよび地形的・統計的なアプローチによる相互補完により,崩壊発生メカニズムを物理的に示した上で,それがほかの地点でも当てはまるのか(普遍性・一般性)を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初実験補助謝金として計上していたが,実験材料である土壌試料の採取に必要な「国立公園内の土石採取許可」の申請手続きに時間を要し,現時点で一部許可が下りていないため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
「国立公園内の土石採取許可」が下り次第,土壌試料を採取し,実験を行うことができるので,その折に次年度使用額はH28年度請求額と合わせて実験補助謝金を計上する計画である。
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