研究課題/領域番号 |
15K01260
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
福山 泰治郎 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (60462511)
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研究分担者 |
平松 晋也 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (70294824)
小野 裕 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (00231241)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 伊豆大島 / 表層崩壊 / 地形量 / 開析 / 遷急線 |
研究実績の概要 |
伊豆大島では2013年台風26号の影響により,10月15日正午から16日未明にかけて累加雨量824 mm,最大時間雨量122.5 mm/hrの豪雨となり,三原山西麓の大金沢等の流域では広域の斜面崩壊とそれにともなう土石流が発生した。大金沢流域では広範囲にわたる大面積の表層崩壊が発生したのに対し,八重沢・八重南沢・大宮沢等では谷筋に沿って比較的小規模な崩壊が多発した。大金沢流域の地形は尾根・谷の区別が不明瞭で平滑な地形であるのに対し,八重沢等の流域は開析が進んでいる。このような地形の違いは,豪雨時の崩壊発生・非発生や崩壊の規模に影響を及ぼすと予想されることから,表層崩壊発生危険箇所の抽出を行う場合,地形量による検討が必要と考えられる。そこで,大金沢・八重沢・八重南沢・大宮沢流域を対象として,災害前後に取得された航空レーザー計測データを用いて,崩壊の規模(崩壊の深さ・長さ)の把握を行うとともに,崩壊発生に関与すると考えられる地形量求め,崩壊発生場の地形特性の把握を試みた。 災害直後のオルソフォトで確認される地表かく乱域には,崩壊発生域と土石流の流下による侵食が卓越する侵食域が含まれる。本研究では,明瞭な谷は侵食域とみなして調査対象から除外し,流路に接する斜面の地表かく乱域を崩壊発生域とみなして抽出した。また,広範囲にわたって地表かく乱が生じた大金沢では,既往の災害報告で示された崩壊地の範囲を参考にして崩壊地(全112箇所)を抽出した。その結果,崩壊深は,1.16 m~1.53 mであった。崩壊長は32 m~65 mで,開析程度の違いを反映して顕著な差が見られた。崩壊地を含む斜面の縦断面形状を災害前後で見ると,いずれの流域でも遷急線直下から遷緩線上にかけての約35°以上の斜面で崩壊が発生している傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
崩壊発生場の地形的特性を明らかにするうえで,どこで表層崩壊が発生しているか,あるいは,どの範囲が崩壊発生場で,どの範囲が流送区間や氾濫区間なのかを明確に分ける必要があるが,そのための現地調査が不足している。現地調査により,オルソフォトだけでは判読することが困難な表層崩壊についてもその場所や規模・深さを調査する必要がある。また,崩壊規模と植生の関係についての検討が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
伊豆大島以外の火山である桜島・雲仙・有珠山・御岳など,火山噴出物が堆積した地域も対象として表層崩壊の発生事例を収集し,土層構造・土質・透水性・地形の観点で整理する。また,文献調査を行った地域を対象として,地学や火山学分野で詳細に調査されてきた噴火史や火山噴出物の空間分布の既往研究成果を収集し,表層崩壊発生危険度の高いエリアの抽出方法を検討する。また,非火山地域でも地形量と崩壊発生場の特徴を明らかにし,火山地域と非火山地域での崩壊発生場の違いを明らかにする。 そのために,崩壊の発生に係わると考えられる地形量(崩壊が発生した斜面の斜面勾配・尾根からの距離・斜面長・曲率・地上開度(開析程度の指標)・集水面積・遷急線等)をGISで計算し,崩壊分布図と重ねて概観する。また,崩壊発生場の地形量を集計し,それぞれの地形量の閾値(崩壊発生・非発生の閾値)を求める。 これらの研究において,崩壊発生に共通する要因を高解像度の地形データを用いて地形量を指標として検討することにより,表層崩壊の多発が予想される未開析な(開析された斜面も含め)火山山腹斜面を抽出するための要因を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
地形解析の作業の一部をアルバイトに行ってもらう予定であったが,研究代表者が地形解析の作業を行ったため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
地形解析の作業については一部をアルバイトに行ってもらうこととし,平成29年度請求額と併せて人件費として使用する計画である。
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