研究実績の概要 |
平成28年(2016)8月,北海道では3個の台風が上陸,1個の台風が接近して,相次いで大雨に見舞われた。本研究の調査地では,このうちの台風9号によって8月23日未明に降雨強度の大きい雨が数時間連続して降り,洪水と土砂移動が発生した。なお,この発生日時は同年3月から調査地に設置していたインターバル撮影カメラの画像記録によって特定された。この土砂移動は,調査地において平成18年(2006)8月豪雨時以来の顕著な土砂堆積イベントとなった。平成28年度はこの土砂移動に伴う河床変動を調べた。 パラダイ川とルベシュベナイ川ともに,2006年豪雨による大規模な土砂堆積以降,2011年まで毎年河床洗掘が継続し,2012年からは洗掘がほとんど起こらなくなっていたが,2016年出水により再び土砂堆積が発生した。一連の土砂移動量は次のようである。パラダイ川では,2006年の滞留土砂増加量は約7,000m3,2011年までの滞留土砂減少量は合計約6,800m3で,2016年の土砂増加量は約2,000m3である。ルベシュベナイ川では,2006年の滞留土砂増加量は約24,000m3,2011年までの土砂減少量は合計約20,700m3で,2016年の土砂増加量は約3,900m3である。 河床横断形の変化は,2006年土砂堆積イベントで形成された平坦な河床が,その後に約5年間続いた洗掘によって溝状流路が発達(最低河床高低下と流路断面積拡大)していき,2012年以降は溝状流路の形が大きく変わらなかった。今回,2016年出水により河床横断形は概ね平坦になった。その変化様式は,1)溝状流路を完全に埋め尽くす堆積,2)溝状流路をある深さまで埋め,同時に側岸の段丘状堆積地の上面を削ることで,河床内の起伏を減らすようにして平坦な幅広い河床になるもの,であった。今後は,再び溝状流路を形成する洗掘が始まると予想される。
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