研究課題/領域番号 |
15K01268
|
研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松本 和健 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (30342439)
|
研究分担者 |
坂口 直志 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (80225789)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 土砂災害 / 土壌インピーダンス / 四探針法 / SQUID磁束計 / 磁気シールド / 低温アナログスイッチ |
研究実績の概要 |
本研究は,土砂災害の発生予防評価手法の提案と実証試験による検討を行っている。評価手法は土壌表面から数mの範囲を四探針法により,10mから数百mの範囲をSQUID磁束計によるRMS法によって土壌インピーダンスの測定をする。本研究の主たる目的は,土壌の複素インピーダンスを測定することにより,土壌の粒形と含水率を評価できることを提案することと,土砂災害の評価に有益な情報提供の検証を目的としている。 平成29年度までの三年間の研究実績は,昨年度の研究計画の変更に伴い外部に公開するまでに至らなかったが,以下の研究内容で成果を得ている。 四探針法による土壌のインピーダンス計測は,土砂災害と土壌粒形の関係を明確にする評価手法として提案する複素インピーダンス測定について検討を行った。研究内容としては単層の構造を持つ土壌モデル実験により,土壌の含水率をパラメータとして複素インピーダンスの評価手法と位相情報の利用実証試験,土壌インピーダンス解析の手法について取り組んでいる。 SQUID磁束計によるRMS法に関連して,検出コイル設計,SQUID磁束計の駆動回路の広帯域化に関する回路設計と実証試験,信号処理手法について検討を行った。特に,信号処理手法に関してはSQUIDセンサーの回路構成が当初の2chによるシステム構成から,1chによる構成に変更することに伴い研究計画の見直しを行った。液体窒素中で動作可能なアナログスイッチデバイスの選定のための実証試験を行っている。 屋外での計測のために必要な磁気シールドの提案を行っている。主な内容は,測定周波数帯より,低周波側で有効な方法と高周波側で有効な方法の二種類について検討している。低周波数側は,磁気的なアクティブシールド法に用いる磁気補正コイルの最適設計を行っている。主に,設計サイズの誤差によるシールド性能の低下要因を検討し,最適な設計手法の検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
四探針法による土壌のインピーダンス計測では,単層構造の土壌モデル実験を行い,土壌抵抗率の大きさと位相データを計測し,土壌の含水率が複素インピーダンスに与える影響についてデータ解析を行っている。含水率は土壌重量と水の重量によって決定し,参考値として含水率計のデータを用いている。抵抗率の大きさと位相変化のデータの評価段階で,10kHz以上の周波数で大きなピークと異常な位相変化を計測したため,計測システムのケーブル構成を検討し,100kHzまでの計測が可能なシステム構成となるように改善した。今後,単層の土壌モデル実験で位相データが土壌の粒形や水分含有率に依存するかについて実証試験を行う段階である。 SQUID磁束計によるRMS法に関連して,昨年度,SQUIDセンサーを,当初予定の2ch構成から,1ch構成に変更し,RMS法の測定システムを構成する方法について検討した。結果として,磁界差分計測をリアルタイムで実現する代わりに,二つの検出コイルを切り替えて一つのセンサーで測定した磁気信号を信号処理後に差分するシステム構成を提案している。今年度は,このシステムの実現のために必要な,液体窒素中で動作可能なアナログスイッチデバイスの選定を行っている。メカニカルな小型リレー,リードリレー,CMOS,フォトスイッチなどについて基本的なデータを検討した。今年度はさらに,納期に半年ほど要したMEMSについて利用可能性の検討を行い。システム構成に最適なデバイスを決定する予定である。 今回製作予定の試作機に用いる磁気的アクティブシールドは可搬性を実現するために寸法を小さくすることが要求される。現時点では磁気補正コイルのマルチコイルの構成による,小型化と寸法に対するロバスト性を検討している段階である。均一磁場生成のためにマルチコイル構成を検討しているが,よりロバスト性の高い構成方法について検討を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
四探針法による土壌のインピーダンス計測は測定系のシステム構成が確立したため,次年度から,土壌の粒径と水分含有量などと複素インピーダンスのパラメータとの相関関係なども含めて,モデル実験データの測定とその評価手法について検討する。また,複素インピーダンスの解析については,電気回路による等価回路を適用して,粒形と含水率を分けて評価することと,土壌インピーダンスの逆問題解析手法について検討を進める。この土壌の複素インピーダンス評価手法を用いて,インピーダンスの位相特性と土壌パラメータの関係を明確にし,次年度で実地調査による本手法の災害評価利用技術としての実証試験を行う予定である。また,得られた結果は論文公開する予定である。 SQUIDによるRMS探査法の実証試験を二個から一個に変更して実現することにした。SQUIDセンサーが二個必要な理由は,RMS法ではインピーダンス測定のために土壌の表皮効果による電磁波の水平磁界成分の勾配計測(磁界の空間微分)が必要なためである。そこで本研究で実現する試作機の段階では,リアルタイムでの計測は不可能となるが,センサーに接続される検出コイルの切り替えによる時間的分離による空間微分を行うことで実証試験を行う。この研究計画の変更に伴い,必要物品の準備及び研究内容の変更が必要となり,スイッチングの同期信号処理のためにデジタイザを購入し,液体窒素温度での極低温環境下で動作可能なスイッチング素子の調査・検討を引き続き研究課題に加えた。 シールド方法については,磁気補償コイルのロバスト性も含めた最適設計が完了次第,試作機の作成に取り掛かる予定である。現在マルチコイル構成の最も内側のコイルのサイズを大きくした方がロバスト性に優れることが判っているが,目標とするシールド性能を満たしていない。この問題を解決するようにパラメータの最適化を行い,実証試験を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主に,アクティブ磁気シールドの最適計算の遅れにより,磁気補正コイルの試作機が作成されていないことによる。但し,磁気補正コイルの試作用予算として考えていた14万円のうち,研究内容変更に伴い低温用アナログスイッチに関連した研究に用いた物品費の残りが次年度の仕様額が生じた理由である。次年度は,この額と当初予算の助成金を合わせて磁気補正コイルの試作機の作成,及び研究内容変更による低温アナログスイッチを用いたSQUID磁束計の検出回路の作成及び試験評価などに伴う物品費と,四端子法の実地検証試験に伴う物品費と旅費に助成金を使用する予定である。
|