本研究は,土砂災害の発生予防評価手法の提案と実証試験による適用可能性の検討を行っている。土壌インピーダンスの評価手法は,土壌表面から数mの範囲を四探針電気探査法により,10mから数百mの範囲をSQUID磁束計を用いたRMS法によって評価する。本研究の目的は,土壌の複素インピーダンスから,土壌の粒径と含水率を評価できる手法を提案することと,その結果が土砂災害の評価に有益な情報を提供できることを検証することである。 四探針法による土壌のインピーダンス計測は,ボーリング調査で地層データの推定可能な地点での実地試験を行った。天候が晴天と雨天時のデータを比較することにより,土壌の含水率をパラメータとして複素インピーダンスの位相情報の利用可能性を実証試験から推定できるLCR等価回路を用いて解析する手法に取り組んだ。 今年度は,予定試験日の風雨が強く荒天となり,十分な試験結果を得ることができなかった。そこで,50 [cm] 立方程度の小さなサイズの研究室内での土壌モデル試験を計画した。この研究室レベルの試験は,土壌の含水率を正確に管理できるため,LCRモデルで解析した実地試験結果の実証データとして期待できる。しかし,屋外の実地土壌試験結果を,研究室レベルの土壌モデルで再現できず,実地試験で得られた検証結果を説明できるモデルを十分に検討できていない。 SQUID磁束計によるRMS法では,検出コイル設計,SQUID磁束計の駆動回路の広帯域化に関する回路設計と実証試験,信号処理手法について検討を行った。特に,液体窒素中で動作可能なアナログスイッチデバイスの選定のための実証試験を実施した。CMOSスイッチに比べて,MEMSはクロストークが少なく,低損失であるといった結果を得ている。但し,低温にした場合に,内蔵されている昇圧用の回路が動作せず,外部電源が必要になるといった問題点が残った。
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