研究課題/領域番号 |
15K01269
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
辻野 和彦 福井工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (10321431)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 土砂災害検知センサー / ウェブカメラ / UAV / 数値表面モデル / オルソモザイク画像 / 防災マップ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)衛星画像や各種の地理空間情報(オープンデータを含む)を用いて、地震や集中豪雨を誘因として発生した土砂災害の履歴を整理し、斜面災害(斜面崩壊、土石流)の危険個所を絞り込むこと、(2)UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)を用いて土砂災害発生個所や危険個所の空撮を行い、オルソモザイク画像やDSM(Digital Surface Model:数値表面モデル)を生成することで、山間部に住む住民の防災マップづくりに寄与する情報を提供すること、(3)危険個所として絞り込んだ斜面にWebカメラを用いた土砂災害検知センサーを設置し、住民の迅速な避難行動に資するシステム開発を行うことである。 平成27年度に引き続き、平成28年度においてもWebカメラを用いた土砂災害検知センサーの開発に取り組んだ。樹木などの不動点にターゲットを設置し、それをWebカメラで監視し続け、そのターゲットが移動した際に斜面災害が発生したとして警報を出すシステムである。本年度の実績として、ターゲットの移動を検知した際に、サーバーに移動後の画像をアップロードし、登録したメールアドレスに避難情報を出すことができた。なお、複数回の実験を試みた結果、アップロードには約10秒、移動を検知した後、約1分で警報メールが届けることができた。また、Webカメラが捉えている画郭全体ではなく、ターゲット付近のみに着目して移動の監視を行うことができるようになった。 UAVを用いた空撮では、生成したDSMの精度が約±2cmであった。非常に細密なオルソモザイク画像やDSMが生成できることが判った。DSM生成の精度向上には,90%程度のオーバーラップ,1画素1cm程度の空撮,GNSS測量による基準点の設置が重要であることが判った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の全体構想として,(1)人工衛星画像(SARデータ)を用いた斜面崩壊の検出とDEM生成,(2)各種の地理空間情報を活用した土砂災害発生箇所の素因・誘因の特性の分析と考察,(3)土砂災害の特性分析結果に基づく危険箇所の絞り込み,(4)斜面崩壊検知センサーの開発と危険斜面への設置という4つのステップを考えた. 平成28年度は,研究実績にも示した通り,土砂災害検知センサーの開発の中で,とくにターゲットの移動を検知した際のサーバーへの画像のアップロードと登録したアドレスに対する警報メールの送信,Webカメラの画郭全体でなくターゲット付近のみに絞り込んで移動を検知すること,OpenCVの環境を用いて,移動した際に移動した箇所を明示すること,複数台のWebカメラでターゲットを監視すること等の検討を行った.その結果,ターゲット移動後のサーバーへの画像のアップロードは約10秒とほぼリアルタイムで行うことができた.また,警報メールは約1分で登録したアドレスに届けることができた.さらに,ターゲット付近のみに着目して移動の検知を行うことができるようになった. UAVを用いたオルソモザイク画像やDSMの生成では,平成27年度では平均の誤差が約±10cmであったが,オーバーラップや低空による空撮,GNSSによるRTK測位による基準点の設置によって平均の誤差が約±2cm程度となった. 実斜面では電源の確保が必要であるがソーラーパネルを準備した.平成29年度は実斜面において実証実験を実施したい.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(平成29年度)は,実斜面において土砂災害検知センサーが使用可能かの実証実験を実施する.進捗状況で示した実験は,福井高専の敷地内にある築山でターゲットを移動させることで実施した.したがって,電源は建物から電源ドラムを用いて確保した.実斜面では電源の確保が困難なため,ソーラーパネルとバッテリーを準備し電源として活用したい.Webカメラは無線で利用できる機種のため,ポケット WiFiでLANを構築する.また,Webカメラは基本的には屋内で使用することが想定されているため,雨水に対する防水や防塵が備わっていない.アクリル板を加工して防水・防塵ができるようなケースを自作することで解決したい. 平成28年度は,複数台のウェブカメラを用いてターゲットの移動を検知することができた.1台のWebカメラに対して1つのターゲットを監視させることを想定し,カメラからターゲットまでの距離が把握できれば移動量や移動速度の把握が可能となる.面的にどの程度の土塊が移動しているか,また,その移動速度が把握できるかも併せて検討したい.
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