研究課題/領域番号 |
15K01274
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
佐藤 宏明 岩手大学, 理工学部, 助教 (90359498)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ドップラー計測 / 生体運動速度 / 心拍動計測 / 電磁マイクロ波 / MIMO / 独立成分分析 / 心臓疾患 / 非侵襲診断 |
研究実績の概要 |
アレーアンテナと空間信号処理によってマイクロ波(電磁マイクロ波)を用いてヒトの心臓活動の非接触,非侵襲な計測を行い,ヒト心臓疾患の診断に役立つ,生体組織の運動や弾性率の変化をマイクロ波によって計測し診断情報の抽出を目指して,“MIMO(Multi Input Multi Output)アレーアンテナ空間信号処理の実験装置”の開発を行った.計測精度の向上と計測信号から心臓活動との相関性を調べ,より多くの診断情報の獲得を目指した. 計測と提案の研究を遂行するために,実験装置の送受信をMIMOに対応するように改良・拡張を行った.送信側のアンテナの追加に加えて,受信側で送信アンテナを識別する信号処理が必要となる.RF(Redio Frequency)信号を周波数変換器でベースバンド信号変換をし,ディジタルレコーダによりAD 変換をして記録する.その後,信号データをホストコンピュータに転送して,ホストコンピュータ上で空間信号処理の演算を行う.また,ディジタルレコーダには心電計より心電信号を入力し同時計測を行い,これもホストコンピュータ上に転送して抽出した心臓拍動の信号との比較を行い,心臓活動との相関性を調べた. 開発された実験装置を用いて計測実験を実行した.まず,生体に反射された受信信号に対して演算を行って,心臓の運動のドップラー測定を行ったところ,その運動速度値が求められ,その速度振幅や周期が心電波形と高い相関性が認められた.次に,MIMOによって得られた複数経路からなる信号から雑音を除いて心拍成分検出を抽出するため,独立成分分析を導入したところ信号の分離に対して効果が認められた.さらに,ドップラー計測の雑音混入に対する耐性について,SNRと周波数範囲の両面から検証及び評価を行い,この知見について1件の論文発表と1件の研究報告を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年までの実験成果を受けて,新たに2世代目の“MIMOアレーアンテナ空間信号処理の実験装置”の設計・開発に着手したが,仕様策定に手間取り装置メーカーへの発注の遅れとメーカー内での開発進捗の遅れもあって,年度内の実験装置納入と実験設備の立ち上げが出来ず,予定していた計測実験を行うことが出来なかった.
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度で未完であった新しい実験装置の開発を早期に完了し,計測実験の遅れを取り戻し,引き続き以下のヒトの心臓活動の非接触計測について研究を推進する. 1.各種の波形解析アルゴリズムを適用し,検出精度向上法について検討する.2.計測のアルゴリズムの確立と検出精度の明確化を目指す.3.MIMOアレーアンテナ空間信号処理のシミュレーションによる検証にも取り組む.4.RFスイッチを用いて,アンテナ系を追加し,測定系の更なる高度化を図る. また,マイクロ波を用いたヒトの心臓活動の非接触,非侵襲な計測について得られたここまでの研究成果を,国内外の研究会議等での発表を予定している. 引き続き,研究代表者佐藤が実験装置の製作および信号の計測と信号処理を担当し,連携研究者本間直樹(岩手大学理工学部教授)が送受信アンテナ製作および周辺電気回路の製作を担当する研究体制で研究を推進する.さらに,必要に応じて所属組織内の技術職員2名の協力を得る.
|
次年度使用額が生じた理由 |
支出予定にしていた新しい“MIMOアレーアンテナ空間信号処理の実験装置”が年度内に完成・納入されなかったため執行が無かったが,これは次年度の早期の段階で執行される予定である. また被験者に対する計測実験を計画してその謝金を予定していたが,被験者を頼まずに実験を進めたので謝金の支出が無かった.
|
次年度使用額の使用計画 |
発注済みの新しい実験装置の支払いに充てる.
|