アレーアンテナと空間信号処理によってマイクロ波(電磁マイクロ波)を用いてヒトの心臓活動の非接触,非侵襲な計測を行い,ヒト心臓疾患の診断に役立つ,生体組織の運動や弾性率の変化をマイクロ波によって計測し診断情報の抽出を目指して,“MIMO(MultiInput Multi Output)アレーアンテナ空間信号処理の実験装置”の開発を行った.計測精度の向上と計測信号から心臓活動との相関性を調べ,より多くの診断情報の獲得を目指した. 計測と提案の研究を遂行するために,実験装置の送受信をMIMOに対応するように改良・拡張を行った.送信側のアンテナの追加に加えて,受信側で送信アンテナを識別する信号処理が必要となる.RF(Redio Frequency)信号を周波数変換器でベースバンド信号変換をし,ディジタルレコーダによりAD 変換をして記録する.その後,信号データをホストコンピュータに転送して,ホストコンピュータ上で空間信号処理の演算を行う.また,ディジタルレコーダには心電計より心電信号を入力し同時計測を行い,これもホストコンピュータ上に転送して抽出した心臓拍動の信号との比較を行い,心臓活動との相関性を調べた. 開発された実験装置を用いて計測実験を実行した.まず,生体に反射された受信信号に対して演算を行って,心臓の運動のドップラー測定を行ったところ,その運動速度値が求められ,その速度振幅や周期が心電波形と高い相関性が認められた.次に,MIMOによって得られた複数経路からなる信号から雑音を除いて心拍成分検出を抽出するため,独立成分分析を導入したところ信号の分離に対して効果が認められた.さらに,ドップラー計測の雑音混入に対する耐性について,SNRと周波数範囲の両面から検証及び評価を行い,この知見について2件の研究報告を行っている.
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