研究課題/領域番号 |
15K01276
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片山 統裕 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20282030)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経血管カップリング / 内因性光信号イメージング / フラビン / 局所脳血液量 / ヘモダイナミクス / グリア細胞 / 脳 / 血管 |
研究実績の概要 |
本研究で開発したイメージングシステムを用い、マウス大脳皮質活動を経頭蓋的に記録した信号の解析を行った。従来、大脳皮質活動の内因性光信号イメージング実験では、機能的磁気共鳴イメージング法で取得される信号との類似性にもとづき、刺激応答性や自発性活動の定量評価には酸素化ヘモグロビン濃度の変化量が用いられてきた。一方で、神経血管カップリングによって生じる局所脳血液量の変化成分のほうが、酸素化ヘモグロビンより神経活動との関連性が強いことを示唆する報告がある。そこで、大脳皮質の各領域の機能的結合(自発性活動の0.01~0.1 Hz成分の相互相関係数で計られる)について、局所血液量と従来法である酸素化ヘモグロビン濃度を用いたものと比較した。その結果、両者が同様の結果が得られることが判明した。 大脳皮質の神経活動と局所脳血液量の変動成分には相関が見られ、その基盤には神経血管カップリングと呼ばれるメカニズムが介在していると考えられている。しかし、サルの視覚野において、これらが乖離する場合があるとの報告がある。この現象をマウスで検証することが本研究の当初の目的のひとつである。そのために、視覚弁別課題を実行中のマウスで神経活動と局所脳血液量変動を同時記録するための実験系の開発を行った。イメージングのためにマウスの頭部を固定すると、ストレスのために学習効率が著しく低下する。そこで、頭部固定状態のラットが短期間でオペラント条件付けを学習できる実験システムをマウス用に改修したシステムを開発した。しかしながら、学習成績が想定より低く、当初の目的の実験に使用するには問題があることが判明した。そこで、計画の一部を変更し、より学習が容易な感覚応答課題を新規に開発する必要が生じ、そのために研究期間を1年間延長することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
サル視覚野で観察されている、視覚刺激に関連した神経活動と局所脳血液量変動の乖離が生じる現象をマウスで検証するために、視覚弁別学習中のマウスの大脳皮質活動をフラビン蛍光とヘモダイナミクス散乱光により同時記録する予定であった。しかし、学習成績が想定より低く、現状では解析が困難であることが判明した。より学習が容易な感覚応答課題を新規に開発する必要が生じたため、計画を変更し研究期間を1年延長することにした。
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今後の研究の推進方策 |
頭部を固定されたマウスでも2週間程度で学習が容易な視覚学習課題を新規に開発する。これを用いて、視覚弁別学習中のマウスの大脳皮質活動をフラビン蛍光とヘモダイナミクス散乱光により同時記録し、サル視覚野で観察されている、視覚刺激に関連した神経活動と局所脳血液量変動の乖離が生じる現象をマウスで検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度に、マウスの学習に関連した脳機能イメージングを行い、その解析結果を国際会議において発表する予定であった。しかし、学習成績が想定より悪く、解析が困難であることがわかった。そこで、計画を変更し、より学習が容易な感覚応答課題を新規に開発する必要が生じた。このため、マウスのイメージング実験・解析とその成果発表を30年度に行うこととし、未使用額はその経費に当てることとした。
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