研究課題/領域番号 |
15K01278
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
永井 亜希子 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (40360599)
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研究分担者 |
野崎 浩佑 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (00507767)
堀内 尚紘 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (90598195)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アパタイト / 薄膜 / ライブイメージング / 骨芽細胞 / 骨組織 |
研究実績の概要 |
本研究においては、機能性人工骨補填材の開発のために、生体―インプラントマテリアル間で生じる相互作用を、経時的に評価する方法論の確立を目的としている。具体的には、骨修復過程において骨補填材と生体骨組織間で生じるさまざまな事象(骨芽細胞の骨産生や破骨細胞の骨溶解など)を、これまでの定点的観察評価に加えて、リアルタイムに同一標本を観察するための手法を構築することが目的である。骨や骨補填材料と細胞間の界面を直視下で観察するためには、それら材料が透光性を持つことが必要となる。27年度は材料作製として、骨補填剤の代表格であるハイドロキシアパタイトのナノ薄膜の作製と、組成がより骨組織に近い炭酸置換型ハイドロキシアパタイトの作製を行った。薄膜は、培養用ガラス基板材料に、1.カチオンポリマーで前処理したのち、アパタイトナノ粒子をスピンコートする方法、2.有機材料とアパタイトのコンポジットをあらかじめ作製し、コートする方法で行った。炭酸置換は、化学組成の異なる2種類を炭酸雰囲気下焼結で作製した。作製した膜は両者とも透光性を持ち、以下の物性評価を行って安定したアパタイトであることを確認した。X 線回折法や透過型電子顕微鏡による結晶構造解析を、表面形態や粗さを、走査型電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡を用いて観察した。化学組成や溶解性を、フーリエ変換赤外分光光度計分析や誘導結合プラズマ発光分光分析にて測定し、炭酸置換量を決定した。作製した透光性アパタイト薄膜上で、生細胞の細胞膜をラベルできる蛍光色素にて染色した骨芽細胞様細胞の培養を行い、細胞挙動について3日間、経時的に観察することができた。また、それら細胞の接着・増殖の様子は、これまで、アパタイトペレット上で培養し、固定後染色して観察していた形態の定点的変化と類似した挙動であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している、を選択した理由は、培養用ガラス基板材料上に、ほぼ均一に、ハイドロキシアパタイト薄膜を、透光性を持たせて作製できたこと、が一番の要因である。この表面が本研究において生体との接点となり、観察すべき界面であるからである。また、生体との実験であるため、滅菌操作が必要になるが、乾熱滅菌、エタノールや水を用いた洗浄、ともに膜が基板から剥離することはなく、接着強度も得られているため今後の実験に問題ないと考えている。また、炭酸置換型アパタイトは、生体骨組織にほぼ類似した量の炭酸置換材料を得ることができた。このアパタイト膜上での細胞培養を行い、生細胞を用いた経時的観察を行うことができた。遺伝子レベルでの細胞の解析はこれからではあるが、少なくとも、顕微鏡観察のレベルでの形態観察では、これまで観察されてきた固定細胞のものと同様であると言える。新しいイメージング法を確立に必要な従来法との比較が、比較的容易であると推測できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については、材料チームはナノ薄膜のさらなる均一化と物性評価を行う。また、炭酸置換型のアパタイト薄膜を作製する。骨組織のアパタイト結晶の配向性は、骨質と密接に関連していることが報告されている。ナノ薄膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、作製法に応じて、板状結晶もしくは針状結晶ができる。コーティング方法を改善することでこれらの結晶が配向性を持つ表面を作製していく。ビトロチームは、骨芽細胞の分化過程を観察するため、さらに生細胞のまま長期間観察できるようにラベリングや培養法などを改善していく。また、細胞の種類によって基板への接着が異なるので、上皮系細胞や幹細胞を用いた観察を行う。ビボチームは、生体でのイメージングのための材料設計を完成させ、観察法を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会が東京近郊であったため、旅費が想定より少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
培養細胞の分化状態を知るための、抗体を購入する
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