研究課題/領域番号 |
15K01282
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
田口 弘康 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任教授 (90102912)
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研究分担者 |
遠山 育夫 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 教授 (20207533)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機化学 / 脳神経疾患 / 神経科学 / 核磁気共鳴画像 / 診断薬 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、フッ素MR画像法によるアルツハイマー病の診断試薬の開発に取り組み、Shiga-XおよびShiga-Y化合物を開発し、アルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスを用いて老人班のMR画像化に成功した。その過程で、色々な脳内異常蛋白をフッ素MR画像法で画像化するための基本的構造(ユニバーサル試薬)を見いだすとともに、複数の試薬の同時投与による二重MR画像法に成功した。本研究では、これまでの成果を拡大し、神経原線維変化、レビー小体、TDP-43凝集体に特異的に結合し、強いフッ素NMR信号を出す試薬を開発することである。 H28年度は、神経原線維変化に特異的に結合する化合物について検討した。合成した化合物を化合物を20%クレモフォール含有生理食塩水に溶解して10 mg/mLに調製したものを投与液とした。この投与液をペントバルビタールナトリウム(50 mg/kg, i.p.)による麻酔下のタウ遺伝子改変マウス(rTg4510マウス)と野生型マウスに、尾静脈から投与した(投与量200 mg/kg、投与速度0.2 mL/kg/min)。投与終了後、7テスラMRI装置(Agilent)を用いてマウス頭部のMRIを測定した。フッ素MRIの画像はケミカルシフトイメージング法(CSI法)によって取得した。フッ素MRI画像を比較すると、野生型マウス(Wild-type)では。、ほとんど信号は検出されなかった。rTg4510マウスでは野生型マウスに比べて頭部に強いMR信号が検出された。これらの化合物について、特許を出願した(特願2017-046350)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、神経原線維変化に特異的に結合する化合物を合成し、フッ素MR画像法での画像化に成功し特許を出願できた。また、それらの成果を国際学会を含む国内外の学会で発表できたことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に特許出願した新規のタウプローブに関する研究成果をまとめて国際学術誌に発表するとともに、パーキンソン病を含む他の神経変性疾患診断用のプローブ開発に取り組む予定である。 神経原線維変化の蓄積が認められるモデルマウスとして、タコニック(米国)が販売しているP301L変異型ヒトタウ遺伝子改変マウス(JNPL3マウス)を用いる。また対照としてはB6D2F1マウスを用いる。 加えて、19F MR信号の画像化測定には、これまでに実績のあるケミカルシフトイメージング法を用いてきたが、寄り高感度な方法の開発にも取り組む。予備実験はすでに開始しており、一定の成果が得られている。フッ素MRIは、分担研究である遠山と連携研究者のMR医学研究分野(旧MR医学研究センター)の森川茂廣教授が共同で行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
合成試薬の一部が国内在庫がなく、輸入手続きを取った。そのため、1月納品の予定が、1月以上遅れることとなり、以後の実験計画が平成29年度にずれこんでしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年1-3月予定の3ヶ月分の研究計画を平成29年4月から、1ヶ月半に短縮して実施する。繰越予算は、すべて試薬合成のための物品費にあてる。
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