研究課題/領域番号 |
15K01285
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
清野 健 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40434071)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 長時間相関 / フラクタル |
研究実績の概要 |
(1) トレンド除去スケーリング解析法の数理的基盤の確立:Detrended fluctuation analysis (DFA)やdetrending moving average analysis (DMA)などのトレンド除去スケーリング解析法の基礎理論を構築した.これらの解析法は,時系列にみられる長時間相関を定量化するものである.本研究では,トレンド除去スケーリング解析法の周波数応答特性を解析的に導出する方法を提案した.この方法の応用例として,DFAおよびDMAの周波数応答特性を解析的に求め,これらの解析法の基本特性を明らかにした. (2) Detrending moving average analysis (DMA)の高速アルゴリズムの開発:DMAの高速アルゴリズムを構築した.DMAでは,観測時系列に含まれる滑らかなトレンド成分を除去するためSavitzky-Golayフィルタが用いられている.Savitzky-Golayフィルタは畳み込みとして計算可能であるが,ここでは部分和計算の逐次更新式を導入することで,畳み込みを用いる方法よりも高速なアルゴリズムを開発した.従来のアルゴリズムが時系列の長さの2乗に比例した計算時間が必要であるのに対し,本研究で提案したものは時系列の長さに比例した計算時間に短縮可能である. (3) Detrended fluctuation analysis (DFA)の非線形フィルタ特性:現在,長時間相関やフラクタル構造の分析のためにDFAが広く用いられるようになっている.本研究では,DFAで用いられている区分的多項式のあてはめが非線形フィルタであるため,推定誤差が大きくなることを明らかにした.さらに,Savitzky-Golayフィルタを用いることで,その欠点が改善できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トレンド除去スケーリング解析法の数理的基盤の確立について,大幅な進展があった.さらに,心拍変動にみられる高周波数領域の非ガウス性の起源を解明するなどの成果がえられた.全体として,順調に計画が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,前年にえられたトレンド除去スケーリング解析法の理論を,多次元データや多変量データへと拡張する.特に,Savitzky-Golayフィルタを用いたトレンド除去スケーリング解析法について,詳細な理論を構築し,その応用について検討する.また,非ガウス性に関連した,高次の統計量の応用についても検討する.
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