研究実績の概要 |
長期植込み型補助人工心臓(VAD)は実用化されたが、小児用あるいは成人部分補助用のVADは国内にない。本提案では、低流量でも溶血・血栓がない、小児用および部分補助用の軸流補助人工心臓を目的として開発している。 部分循環補助をめざす軸流ポンプとして、昨年度は接液部をポリマー製とし、ダブルピボットおよび翼型4枚羽根からなる直径14.8mmの動翼と、5枚羽根の静翼を有する軸流ポンプKAP6を設計製作した。溶血試験では8,000 rpm(65mmHg)以下では臨床許容限度内(NIH<0.04)であったが、それ以上では限度外(>0.04)となった。慢性ヤギ動物実験では、0.3 L/minという低流量で維持したためか、8,000rpmで装着4日後から電流値が増加し血栓形成が推定された。従って開発した軸流ポンプは、溶血の観点から8,000 rpm以下で使用することが望ましいが、血栓の観点からは流量1L/min以上、かつACT>200sでの使用が望ましいことが分かった。 溶血対策として今年度は、接液部をポリマー製とし、ダブルピボット軸受と直径14.9mmの4本流路付き円筒形動翼と、8本溝の静翼を有する軸流ポンプKAP8を設計製作した。羽根先端隙間が100μmのKAP2と50μmのKAP8の2台を比較した。9,000rpm (85mmHg)ではせん断速度10万s-1を閾値として、隙間50μmのKAP8では臨床許容限度外(>0.04)であったが、隙間100μmのKAP2では許容限度内(NIH<0.04)となった。 このKAP2を体重61kgのヤギに装着して、血流量2.0 L/min、回転数10,000 rpm での抗血栓性評価を行ったが、2時間後に入口静翼に血栓形成を認め、実験を終了した。溶血特性の改善はできたが、高回転数での血栓対策はまだ十分でないことがわかった。
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