研究課題/領域番号 |
15K01289
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
笹川 清隆 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (50392725)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 生体埋植デバイス / 脳機能計測 / CMOSイメージセンサ / 生体内通信 |
研究実績の概要 |
本研究では,無線化された脳内への完全埋植型センサデバイスを試作し,脳内神経活動の長期観察を可能とする生体モニタリング技術の確立を目指す。 具体的には,微小なセンサ回路に,生体の電気伝導性を利用した信号送受信技術(生体内通信技術),および,無線給電回路を統合した半導体集積回路チップを設計し,これを用いて生体内に完全埋植可能なデバイスを作製する。完全埋植デバイスを実現することにより,生体への侵襲性を可能な限り低減し,生体の免疫反応を極力抑えることで,長期間の生体信号観察を可能とする。 本年度は,生体内通信技術を応用した,低電力かつ小型なセンサの開発を主に行った。生体内通信においては信号出力振幅が不安定となるため,小面積かつ低電力で実現可能なパルス幅変調(PWM)出力回路を用いたセンサを設計・試作した。また,多数のイメージセンサを脳内に分散埋植することによる協調的な脳活動計測の実現に向けて,出力タイミングを外部制御できる複数順次PWM出力イメージセンサを設計した。これまで実現してきた2配線駆動のセンサに矩形波を電源として入力する機能を付加し,複数のセンサの出力タイミングを個別に制御することで時分割複重通信を実現した。 試作したPWM出力センサを実際に生体マウスの脳表に配置し,生体内通信によって信号を伝送させ,脳表のイメージングが可能であることを実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は生体内通信技術を応用したイメージセンサの小型化および低消費電力化を行い、生体内でのイメージング実証に成功した。今後は、センサを駆動するための無線給電回路を設計・試作し、イメージセンサ回路と統合してゆくこととなる。高周波を用いた無線給電技術は成熟した分野ではあるが、生体に対する侵襲性を低くするための小型化や生体内に埋植された状態での高い給電効率を実現するための設計が必要となると考えられる。 生体内センサに向けた画素回路としては、自己リセット回路を用いた微弱な輝度変化検出を実現した。 以上を踏まえ、進捗状況は概ね予定通りであると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の予定通り小型かつ無線給電回路の試作を行う。また、本年度試作した有線センサを用いて複数チップでの脳表観察や生体に対する影響の評価を検証する。 完全埋植型デバイスでは、レンズの搭載が困難であるため、空間分解能の改善が課題の一つとなっている。センサ画素について、入射角検出が可能な画素設計を行い、生体組織内での光拡散による空間分解能低下を画像処理によって軽減する手法に着手する。
|