研究課題/領域番号 |
15K01290
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
田村 篤敬 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30394836)
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研究分担者 |
小出 隆夫 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60127446)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歩行者 / 外傷性脳傷害 / 交通外傷 / 神経線維束 / 単軸引張 / 力学特性 |
研究実績の概要 |
交通外傷の中でも,特に予後の経過が不良な頭部外傷を予防する上では,その受傷機序を明らかにすることが不可欠である.しかしながら現状では,衝撃相当の力学的負荷に対して,巨視的には頭蓋内脳組織,微視的には神経線維にどのような外力が作用しているのかは不明であり,その両者を適切に考慮した外傷性脳傷害評価手法を新たに導入する必要がある.そこで先ずは,歩行者の衝突事故を車両と人体との1次衝突のみならず,路面と頭部との2次衝突を含めて計算機上で再現し,頭蓋内脳組織が曝される力学的環境を明らかにすることを目標に,様々な事故形態を想定した歩行者対車両の衝突シミュレーションを実施した.また,脳の機能障害には神経の微視的損傷が関与すると予想されることから,理想的には数値解析で得られた衝撃と同等の環境下(最大でひずみ速度 10/s のオーダー)で線維の力学特性を実験的に求める必要がある.そこで本研究では,倒立顕微鏡下でも使用可能な単軸引張試験装置を独自に開発し,神経線維束を対象に,ひずみ速度 0.01~1/s オーダーの引張試験を行うことによって,変形速度がその力学的強度に及ぼす影響をマクロレベルで明らかにした.今後は,高速変形時における神経線維束の力学的挙動を予測できるよう線維束の応力緩和試験に取り組むとともに,最終ゴールとして外傷性脳傷害の評価指標を確立することを目指し,神経線維の微視的損傷に着目した力学実験ならびに数値解析の両面から,さらなる研究を進めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,歩行者の衝突事故を車両と人体との1次衝突のみならず,路面と頭部との2次衝突を含めて計算機上で再現し,頭蓋内脳組織が曝される力学的環境を明らかにすることを目標として,様々な事故形態を想定した歩行者対車両の衝突シミュレーションを実施した.また,脳の機能障害には神経の微視的損傷が関与すると予想されることから,理想的には数値解析で得られた衝撃と同等の環境下(最大でひずみ速度 10/s のオーダー)で線維の力学特性を実験的に求める必要がある.そこで本研究では,倒立顕微鏡下でも使用可能な単軸引張試験装置を独自に開発し,神経線維束を対象に,ひずみ速度 0.01~1/s オーダーの引張試験を行うことによって,変形速度がその力学的強度に及ぼす影響をマクロレベルで明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,歩行者対車両の衝突シミュレーションから,外傷性脳傷害の受傷リスクを評価する手法を確立するとともに,神経線維束を対象に単軸引張試験を行い,試料がマクロレベルで破壊に至る過程を明らかにすることができた.今後は,①実験計画法などを活用することによって,歩行者の衝突シミュレーションから外傷性脳傷害の発生に寄与する加害要因を具体的に抽出するとともに,②顕微鏡下で神経線維束あるいは線維単体の引張試験を実施する手順を確立することを目指し,さらなる研究を推進していく予定である.そのために本年度は, ①衝突シミュレーションに関して,車種,衝突速度,車両減速度,歩行者の移動速度などが,傷害予測パラメータに及ぼす影響の評価 ②神経線維束の力学実験に関して,低~中速の引張試験結果から高速変形時の力学的挙動を理論的に予測する手法の開発 ③神経線維束に含まれる細胞核・神経線維を染色して蛍光観察する方法の確立,ならびに線維束から線維単体を単離する手法の開発 などに取り組む予定である.
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