研究課題
近年,国内交通事故による死亡者の数は減少傾向にあるにも関わらず,歩行中の死者数はほぼ横ばい状態であり,現在では自動車に乗車中の死者数を抜いて死亡原因の第一位となっている.歩行者傷害の中で最も致命的なのは,言うまでもなく頭部外傷(外傷性脳傷害)であり,直接的死因の約6割を占める.外傷性脳傷害に関しては,以前より頭部に作用する並進加速度と回転加速度の危険性が指摘されており,その結果,脳組織に生じるひずみや頭蓋内圧の急激な変化が脳損傷を引き起こす原因になるものと予想されているが,未だその受傷メカニズムは明らかでない.そこで本研究では,実験計画法にもとづくパラメータスタディを行い,人対車の衝突事故を複数の車種に対して様々な衝突条件で仮想的に再現した.現行の頭部外傷は並進加速度のみで評価されているが,今回,我々が行った数値解析結果より,衝突形態によっては回転加速度の寄与も有意に認められ,たとえ低速の事故であっても路面衝突が受傷リスクに及ぼす影響は無視できないことが示唆された.具体的には,頭部に作用する並進加速度ならびに回転加速度,その他の物理的因子が頭蓋内脳組織のひずみ増加やその分布に及ぼす影響(寄与度)を重回帰分析と組み合わせて明らかにした.これと並行して,神経線維(束)の力学特性を得るために脊髄神経根から単離した試料の引張試験を行い,外傷性脳傷害が発生するひずみ閾値決定のための基礎データを取得した.ここでは 独自に試作した引張試験装置を用い,脊髄神経根から単離した直径0.5mm,長さ25mm程度の線維束に単軸引張を動的に負荷した場合,軸方向には,ひずみが不均一に分布し,巨視的には15%の伸びひずみが作用すると 試料が構造的破壊に至ることを確認した.また,頸部,胸部,腰部では神経線維束の力学的な強度が有意に異なることを明らかにした.
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http://researchers.adm.tottori-u.ac.jp/html/100001154_ja.html