研究課題/領域番号 |
15K01291
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
加藤 基伸 鳥取大学, 医学部, 助教 (00273904)
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研究分担者 |
井上 敏昭 鳥取大学, 医学部, 准教授 (80305573)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 染色体ベクター / ミクロセル / 細胞融合 |
研究実績の概要 |
一般的な遺伝子導入に用いるベクターサイズは、プラスミドであれば10kb以下であり、宿主大腸菌から抽出したDNAをトランスフェクション法によって受容細胞に導入することができる。これに対し染色体ベクターは、動物細胞を「宿主」としサイズはMbオーダーに及ぶため、染色体ベクターのみをインタクトなDNAとして単離することはできない。このため染色体ベクターを供与細胞から受容細胞に移すには、染色体ベクターの担体としてのミクロセルを利用する。供与細胞にコルセミドを投与するとチューブリンタンパク質の重合が阻害され、染色体分配と細胞質分裂を伴わず細胞周期が進行し、核膜再構築が起きて多数の微小核が形成される。さらに供与細胞にアクチンタンパク質の重合阻害剤であるサイトカラシンを投与し遠心力をかけると、細胞膜の破断と修復が生じ、細胞内容を包摂するミクロセルが形成される。現状ではヘテロな集団であるミクロセルと受容細胞との融合により目的細胞が得られる率は、受容細胞あたり「10の6乗分の1」程度である。染色体ベクターを含むミクロセル画分のみを選択的に分取できれば染色体ベクターの移入効率は飛躍的に増加することが見込まれる。初年度には、蛍光融合タンパク質による染色体ベクター標識の妥当性について検討した。 染色体ベクター標識のための蛍光融合ヒストンH2Bタンパク質発現ベクターを構築し、Cre/loxPシステムを利用した部位特異的組換え挿入反応を利用して、供与細胞であるCHO細胞内にて人工染色体ベクター上に挿入した。蛍光融合ヒストンH2Bタンパク質の発現、 細胞核への局在が確認でき、コルセミド投与による微小核形成過程の経時変化が追跡可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
染色体ベクター標識のためのGFP蛍光融合ヒストンH2Bタンパク質発現ベクターの構築および人工染色体ベクターへの搭載に予定外に時間を要した。一連の研究を進める上での根幹となり、出発資材として実用に耐え得る細胞株を樹立することは重要と判断し、基礎固めに注力した結果、当初予定の遂行には至らなかった。しかしながらH2B-GFP標識人工染色体ベクターを取得したことで、細胞周期の進行に伴う染色体動態の経時変化が追跡可能となり、微小核の誘導形成と単離法を最適化する諸所の実験が、今後加速できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
供与細胞から回収したミクロセル集団は微小核を含むもの、オルガネラを含むもの、細胞質を含むもの等、多様な構成を呈する。これらミクロセルは細胞として生存するに足る機能を欠くが、受容細胞との融合によって供与細胞の内容物を伝達することができる。染色体ベクターには薬剤耐性遺伝子が標識されているので、ミクロセルと受容細胞との融合後、薬剤選択培養によって染色体ベクターを保持する受容細胞を獲得することが出来る。しかしながら、この選択培養法では最終的に耐性株は取得できるものの、受容細胞に移入された染色体ベクターが受容細胞核にインテグレートするまでの過程は未知であった。本年度の成果として得られたH2B-GFP標識染色体ベクターを活用することで、少なくとも染色体を含んだミクロセルのみを識別することが可能となった。次年度には、ミクロセルと受容細胞との融合後に染色体ベクターの動態を追跡し、染色体ベクターの定着過程解明を通じて移入効率の最適化に関しても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験の第一段階に時間を要したことと、結果得られた出発資材である細胞株を用いての予備実験に注力したため、続く実験を進める上で必要となる消耗品の発注にまで至らず、次年度使用が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度予定していた後続の実験計画遂行に充てるとともに、目標としていた細胞株の取得に伴って当初予定以外に追加検討することが妥当と思われる実験に充当する。
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