研究課題/領域番号 |
15K01292
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
永竿 智久 香川大学, 医学部, 准教授 (20245541)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シミュレーション / 胸郭 / 漏斗胸 / 手術 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
先天性胸郭変形症である漏斗胸は約500人に1人という、もっとも発現頻度の高い先天異常のひとつである。漏斗胸に対しては、金属バーの装着による矯正手術が標準的な治療法として行われる。同法による手術で望ましい結果を得るためには、単純にバーを装着するのみでは不十分であり、さらに一部の骨を離断したり、バーの装着部位を変えたりする工夫が必要である。胸郭の形と柔軟性にはかなり個人差があるので、どのような工夫を行うべきなのかも、症例に応じて大きく異なる。そこで、それぞれの患者における胸郭の個人差を考慮した上で、最良の結果を得るためにはどの肋間にバーを装着し、どの骨を離断すれば良いのか、についての具体的な手術計画を、力学シミュレーションを用いて決定するシステムを開発することを目的として本研究を立案した。本研究を立案する前の基礎段階としてCTデータに基づき胸郭の3次元モデルを作成する技法を完成していたので、本研究においてはより正確な物性値と解剖学的構造を反映させたモデリングシステムを作成し、手術操作を正確に再現するという、「実際性の向上」に力点を置くこととした。具体的には、おのおのの患者につきCTデータを得た上で3次元モデルを作成する。そして実際に負荷試験を行うことにより、肋軟骨の物性値を得る。この値を勘案した上で構造解析計算を行い、手術において胸郭に負荷を加えるとどのように変形するのかを予測する。 本研究が予定通りに進行すれば、胸郭変形症に対する手術において手術時間の短縮・術後形態の改善ならびに合併症の軽減に大きく資すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、実際の患者のCTデータをPC上で3次元モデルに変換し、これに対して適切な物性値を割り当てる技術を開発した。具体的には、患者の季肋部に2~5キログラムの圧迫を加え、季肋部が沈み込む程度を測定する。加える負荷と沈み込みの相関をグラフ化し、基礎数値としつつ計算を行うことで、おのおのの患者における胸郭の硬さが反映された治療結果の予測を行うことができるようになった。さらに、実際の症例3例に対して同システムを応用した手術計画の立案および治療を行い、本システムの有用性につき検証を試行中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究成果により、対称的に比較的単純な変形を有する漏斗胸患者に対しては、手術結果について大方の予測を行うことが可能になった。しかし実際の臨床においては非対称性の胸郭変形を有する患者も多々、存在する。また、精密な治療計画を立てるためには胸郭の硬度についてもより正確に反映する必要がある。そこで本年度は ①より正確な物性値が得られるよう、肋軟骨のヤング率計測に関しての精度向上を目指し、 かつ②実際の臨床症例への応用例を増やす ことを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究における予算支出の大きな部分は、ソフトウェアの使用料金である。本研究においてはLS-DYNAならびにScanIPの二つのソフトウェアを使用するが、それぞれの年間使用料金は38万円および55万円である。これらのソフトウェアの支払時期が年度をまたぐために次年度予算に繰り越している。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のソフトウェア使用料を平成29年度分の予算の中から支払いに充てる予定である。
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