研究課題/領域番号 |
15K01297
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐々木 徹 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (30158927)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 還元ストレス / 酸化ストレス / 活性酸素 / レドックス / 分子イメージング |
研究実績の概要 |
申請者らは、「活性酸素毒性説」の視点から,脳の虚血-再灌流や加齢と活性酸素との関係について検討し、低酸素処理後の再酸素時に活性酸素の生成亢進が認められることを示した。研究を進める中で、(1)低酸素は酸素の供給と消費のバランスで考えるべき、(2)酸素消費の低下した状態(低温時、冬眠など)では供給が低下しても低酸素にならない。(3)反対に、酸素消費が亢進した状態(てんかんの発作時など)では、供給があっても低酸素の状態があるとの着想を得た。申請者らは、酸素の供給低下による低酸素(供給性低酸素)に続く再酸素時(虚血再灌流モデル)に活性酸素の生成亢進が認められることを先に示したが、高カリウム刺激による組織のエネルギー消費亢進に伴う低酸素(需要性低酸素)の緩和期(エネルギー消費を定常に戻した時)にも活性酸素の生成が亢進することを申請者らが開発した「リアルタイムバイオラジオグラフィ法」で明らかにした。本年度は、供給性低酸素と需要性低酸素の緩和過程の脳組織微小環境の酸素濃度とレドックスを、マイクロセンサを用いて解析した。その結果、組織の酸素濃度は供給性低と需要性低酸素時にいずれも低下して、それに伴ってレドックスは還元状態にシフトすることが明らかになった。その後、低酸素の状態が緩和されると組織酸素濃度とレドックスは酸素下の状態に回復し、この過程で活性酸素の生成亢進が認められることが明らかになった。このことから、活性酸素の生成亢進には組織の還元シフトが関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は脳組織微小環境の酸素濃度とレドックスを、マイクロセンサを用いて測定する方法の確立を試みた。本年度は、それらを用いて供給性低酸素と需要性低酸素の緩和過程の脳組織微小環境の酸素濃度とレドックスを解析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度まで、「リアルタイムバイオラジオグラフィ法」を用いた応用研究として、脳組織生切片で活性酸素の解析を行うとともに、マイクロセンサを用いた組織微小環境の酸素濃度とレドックスを解析することで、低酸素の緩和過程の活性酸素の生成亢進機序を解明してきた。次年度は、申請者の開発したイメージング法を再生医療向け培養組織の品質管理に応用すべく、ヒト培養皮膚組織を対象に、陽電子断層撮像法(PET)で汎用される[F-18] フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いた品質管理技術の開発に関する基礎的検討を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳組織スライス用マイクロセンサは消耗品であり、使用によって一定の割合の破損が予想される。マイクロセンサを用いて行った脳組織スライスの酸素濃度とレドックスの測定に関して、当初見積もったセンサの破損と実際の破損との間に差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度の実験計画には、リアルタイムバイオラジオグラフィ法の新しい応用分野として、再生医療の品質管理への利用に関する基礎研究を計画している。上述の理由で生じた余剰金はその研究の充実に役立てる予定である。
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