本年度は研究計画の最終年度であり、「リアルタイムバイオラジオグラフィ法」を再生医療向け培養組織の移植前の品質管理に応用すべく、シート状の支持層の上にシート状に重ねて培養されたヒト表皮細胞を対象に組織・臓器の機能・健全性や安全性の評価の可能を検討し、以下の成果を得た。 (1)組織培養の条件下で組織から放出されるβ線をラジオルミノグラフィ上に記録・読み取り、それを繰り返し捉えることで、組織の放射能分布をダイナミックに画像収集するためのイメージングチャンバーの作製に成功した。(2)ヒト3次元培養表皮キットを対象に[F-18] フルオロデオキシグルコース(FDG)-バイオラジオグラフィ法を用い、最適な評価条件を決定し、本法がヒト培養表皮の品質管理に十分な性能を有することを確認した。細胞障害性を有する各種毒物の影響、低温、低酸素処理の表皮組織への影響をFDG-バイオラジオグラフィ法で解析した。FDGの組織取込は、培養液に加えた各種毒物によって著しく低下した。同様に、FDGの組織取込は、細胞膜溶解性を示すドデシル硫酸ナトリウムの添加によって、濃度依存的に低下した。これらの取込率の低下は、MTT法で求めた生細胞数、細胞生存率の低下と良く一致した。このことから、FDGの組織取込は、組織の細胞数および生存率を反映したものであることが示唆された。FDGの組織取込は、低温(4℃)処理によって、37℃に比して著しく低下した。一方、その取り込みは、低酸素処理によって、酸素存在下に比して著しく上昇した。MTT法で求めた生細胞数、細胞生存率はいずれの処理によって変化しなかったことから、FDGの取込は組織のエネルギー代謝を反映したものであることが示唆された。以上の結果から、FDG-バイオラジオグラフィ法を用いた再生医療向け培養組織の品質管理(組織の生存性や健全性を評価)の可能性が示唆された。
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