研究課題/領域番号 |
15K01299
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
黒田 輝 東海大学, 情報理工学部, 教授 (70205243)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MRI / 体内埋め込み / 医療機器 / 安全性 / 発熱 / 温度分布 / スピン格子緩和時間 / 磁気共鳴周波数 |
研究実績の概要 |
本年度はエコーシフトを使ったシーケンスの妥当性を評価するための準備として、まず磁気共鳴周波数とスピン格子緩和時間(T1)を同時に測定することのできる撮像シーケンスの開発から作業を始めた。まずは体内埋め込み型医療機器がない状態のファントムを準備した。ファントム内部にはポリアクリルゲル(導電率0.45-0.47 S/m,比誘電率 64-80)あるいはオリーブオイルを満たした。 撮像シーケンスとしては、まず複数のフリップ角を使った勾配磁場エコー法を用いて、この特性を解析した。9.4Tの動物実験用MRIを使って、TR/TE = 30ms/5msとした上で、フリップ角を10度から90度まで10度刻みで設定した。これらの中から2つないしは3つのフリップ角を利用した際に、T1の測定精度が最も高くなるフリップ角の組み合わせを求めた。T1の真値はあらかじめ反転回復法にて実測しておいた。この結果、2つのフリップ角の組み合わせでは、10度と50度の組み合わせが最もT1の測定精度が高く、3つ目のフリップ角を組み合わせても余り精度の向上に寄与しないことが分かった。次に温度を変化させた際の、水プロトンの磁気共鳴周波数とT1の相関を求め、室温から60℃の範囲で両者が、相関係数0.99以上で相関することがわかった。以上より、まず複フリップ角法が、発熱評価に使えることが明らかになった。 さらにMRIを用いた体内埋め込み型医療機器周辺の温度分布を求めるための先験情報として、多くの機器の基本形状が、円筒、円柱ならびに円盤で近似できることに着目した。これらの形状における磁束密度、電界ならびにSARの分布を、有限差分時間領域法で求め、機器周辺の発熱ならびにアーチファクトの生じ具合を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように研究結果は出てきているが、当初計画とやや順番を変えて実施しているため、未知な部分を含めてやや遅れていると評価している。当初は上述の勾配磁場エコーに基づく複フリップ角法よりも先にスピンエコーによるエコーシフト法を優先させる予定であった。しかしこのシーケンスの評価のためには、まず体内埋込みが機器のない状態では最も温度を正確に測定できる磁気共鳴周波数と、それとT1の同時測定を可能にする方法が必要であると考えて、複フリップ角法を先に検討した。来年度に遅れを取り戻す。
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今後の研究の推進方策 |
複フリップ角法の特性が概ね把握できたので、2016年度は改めてエコーシフト法を検討する。体内埋め込み型医療機器が存在する際の、温度上昇ならびに金属と周囲組織(ゲル)の間に生じるアーチファクトを、エコーシフト法ならびに複フリップ角法によって得た磁気共鳴周波数及びT1による温度画像から比較・評価する。実験は対象とする体内医療機器の形状を変えて、重点的に行なう。これらの実験結果を、数値シミュレーションと比較して、体内埋め込み型医療機器の存在下において最適な温度分布画像化法を検討する。さらに導電率イメージング法を評価し、同様に数値シミュレーションと比較する。 以上より,全体の研究計画には変更はなく、平成28年度の検討においてMRIによる発熱評価手法を確立してゆきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は計算機ならびに文献を用いた検討が多かったため、研究補助の人件費がかかった反面、実験回数は少なかった。また新規性のある成果を出す以前の、評価のためのシーケンス整備などに時間を要したため、成果発表(論文投稿ならびに国際会議発表)も少なかった。このため統合的には当初予定額よりも使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
先述の平成28年度実施計画に記したように、平成27年度に検討できなかった点を取り戻すため、今年度より実験的検討に時間をかけて、新規性のある成果を出してゆく。このため当初予定額を使用する予定である。
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