本研究は,血液透析治療の際に生じる透析液排液を非侵襲的にモニタリングすることにより,透析効率の指標となる透析量だけでなく,生体にとって有用なタンパク質であるアルブミンの漏出量なども把握できる透析システムを構築することを目的としている.実現することができれば,より安全かつ効率的な透析治療に貢献できるものと期待される. 本研究では,非侵襲で試薬なども用いる必要のないモニタリング手法として,紫外光などを用いた光学的手法を採用する.透析液排液中には様々な溶質が存在し,多く溶質が紫外領域に吸光度を有する.そのため,特定の溶質を分離して検出することは困難であり,溶液全体の吸光度としてモニタリングするのが現状である.我々は透析排液モニタの更なる応用として,従来の透析液排液モニタにタンパク除去処理を加え,その前後で吸光度をモニタリングすることで,アルブミン漏出量を推定できる可能性を確認しており,その検証を行った. 最終年度は,1~2年目に得たタンパク除去法に関する結果をもとに透析液排液中に漏出するアルブミン量の推定法に関する基礎検討を進めるとともに,臨床における評価を想定し透析液排液モニタ試作機を用いたin vitroにおける評価を行った.漏出アルブミン量の推定に必要な除タンパク操作は,臨床現場でのハンドリングを考えるとメンテナンスなどが比較的容易な方法であることが望ましい.そこで本研究では,膜ろ過を用いた方法を主に検討した.その結果,十分な分画を有する膜では多量の透析液排液を速やかに処理するために膜面積の確保が困難であった.一方,高い透水性を有する疎水性の膜を用いた場合,吸着によるアルブミン除去は可能であったが,吸着量が十分でなく比較的早く破過するため耐久性に課題があった.膜ろ過を用いる場合,より低容量で検出できるよう透析液排液モニタの構成を改良することの必要性が示唆された.
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