研究課題
皮膚は体の表面を覆う最大の臓器であり、また組織細胞の治療応用が最も進んだ臓器でもある。事故や熱傷による皮膚組織の欠損に対して、患者自身の皮膚や同種・異種の培養皮膚が実際の医療現場で利用されている。しかし実際に用いられている移植用の培養皮膚は表皮細胞(ケラチノサイト)と真皮細胞(線維芽細胞)による多層シートで構成され、被覆・防護機能は果たせるものの正常組織構築とは大きく異なる形態をとり、毛嚢や皮脂腺等の皮膚附属器を欠いている。例えば熱傷後に再生した皮膚には毛が生えていないだけでなく汗をかくことができないため、広範 囲の熱傷を受けた場合は将来に渡って体温調節が困難になる。このように創傷より治癒した皮膚が附属器を欠くことは生理的および美容的に大きな問題であり、毛嚢・皮脂腺・汗腺を有する正常により近い人工皮膚組織の供給が望まれている。マウス胎児由来の表皮細胞、真皮細胞をヒト間葉系幹細胞、ヒト血管内皮細胞と混合してマトリゲル上で培養したところ培養開始から数時間で自己凝集しはじめ、3日間で組織原基と考えられる細胞塊が形成された。細胞塊の蛍光免疫染色では細胞塊の表層にケラチン陽性の表皮細胞が局在していた。内部はCD31陽性の血管内皮細胞が存在していた。構成細胞をラベリングした細胞塊を蛍光観察したところ、真皮細胞と血管内皮細胞が共局在し、間葉系幹細胞は細胞塊中に散在していた。さらにこの細胞塊をヌードマウス皮下に移植したところ、数は少ないが移植部分の毛嚢形成が観察された。また表皮ケラチノサイトと真皮線維芽細胞の動物種を交差させても同様の結果が得られたことから、この組織原基形成の原理は哺乳動物間で共通であることが示唆された。
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