敗血症性ショックにおいてベータ遮断薬を使用することの有効性が示唆されているが、初期循環蘇生においてベータ遮断薬が安全に使用できるかは明らかではない。今年度の研究では、犬のLPS敗血症性ショックモデルの初期循環蘇生において、短時間作用型ベータ遮断薬ランジオロルの血行動態などへの影響を検討した。 【方法】実験では麻酔下犬12頭において大腸菌LPSを静脈内投与し、敗血症性ショック(平均血圧(AP) 40mmHg)を作成した。ショック作成後1時間から、コンピュータ制御循環蘇生システム(Uemura et al. BMC Anesthesiology 2017)による初期循環蘇生を開始した。このシステムはノルアドレナリン(NA)とリンゲル生理食塩水(RiA)の投与量をコンピュータ制御し、APと心拍出量(CO)を正常目標値へ自動制御する。12頭中、6頭を対照群(CT群)、別の6頭をランジオロル投与群(BB群)とした。 【結果】両群で、システムは起動後速やかにNAとRiAを投与制御開始し、APは70 mmHg、CO は ショック導入前の値まで改善させ、4時間維持した。APとCOに両群間で有意差はなかった。BB群ではランジオロルは平均 2 microg/kg/min投与され、心拍数はCT群に比較し30~40bpmの有意な低下を認めた。しかしながら、NAとRiAの投与量に両群間で有意差はなかった。BB群はCT群に比較し心筋酸素消費量は有意に減少し、BB群内においてのみ乳酸値は循環蘇生により有意に減少した。
【結論】敗血症性ショックの初期循環蘇生において、ベータ遮断薬ランジオロルは、低用量なら安全に使用でき、有益であるかもしれないと結論つけられた。
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