本研究では、臨床で使用されている造影剤では描出できなかった脳微細血管網を超高精細で描出させるための多分岐高分子型ガドリニウム造影剤を合成し、脳疾患の初期診断を可能にするMRIイメージング法を開発することにある。平成27年度から平成29年度では、造影剤の分子構造の評価を実施した。その結果、8分岐型ポリエチレングリコールにフルオレセインとガドリニウムを導入した造影剤(F-8-arm PEG-Gd)は、水溶液中で凝集体構造を形成いていることを突き止めて、その凝集体構造が血中循環性の維持に大きく寄与していることを証明した。さらに、この凝集体は血中において速やかに解離して尿中へ排泄されることから、炎症性マーカーであるCRPやインターロイキンを増強させないことを証明できた。これらの成果に基づいて平成29年では、MCA閉塞プロトコルを用いてラットの脳梗塞モデルの構築と、このモデルラットを用いた梗塞領域のイメージングについて検討した。その結果、梗塞領域に形成された毛細血管網をMRIにより高精細でイメージングできることが示された。さらに脳梗塞ラットへ造影剤を投与しても死亡するような症例はなかった。また市販の造影剤では、閉塞により再構築された微細細血管網を可視化できなかったことから、開発したF-8-arm PEG-Gdにより、脳血管障害を診断できる高感度なMRプローブであることを立証できた。研究計画の最終目標である脳疾患の初期診断の可能性をMCAOラットモデルで立証することができ、これらの成果を踏まえて論文投稿も完了することができた。
|