研究実績の概要 |
酸化LDLは細胞レベルで研究を論拠とし、動脈硬化のみならず様々な循環器病おける原因・憎悪因子として注目されてきた。RI標識を行った酸化LDLによる体内動態観察では、肝臓に取り込まれ血中からはクリアランスされる事が報告され、酸化LDLと循環器疾患との関連に対して懐疑的な見方もされるようになってきた。 本研究により酸化LDLの代謝は肝臓のみならず、同程度の代謝が全身の骨格筋や褐色脂肪で行われていることを、野生型マウスと酸化LDL受容体ノックアウトマウスでのイメージング結果を比較することで示した。さらに褐色脂肪では寒冷刺激により、骨格筋では適度な運動負荷により酸化LDLの取込が亢進することを明らかにした。 動脈硬化モデルマウスであるApoEノックアウトマウス(ApoE KO)とのダブルノックアウトマウス (DKO)を作成し、運動負荷のないApoE KO, DKOおよび其々に対して回転車による自発運動負荷の4群間比較を行ったところ、運動負荷群は無負荷群にくらべ有意に死亡率は低かった。なお、DKOマウスの運動負荷の回転車の回転数は有意に少ない結果である。死亡時およびEndPointにおいて大動脈のEnFace標本を作成し動脈硬化の面積を比較したところ、以外にもDKO群は運動負荷の有無に関わらずApoE KOと比べ少ない傾向があった。もっとも寿命が長かった群はApoE KOで運動負荷を行った群である。この群は動脈硬化の面積は大きいものの、毛艶もよく、腫瘍なども観察されず健康的な状態であった。それに対して2番目の寿命のDKO運動負荷群は毛艶がわるく、抜け毛も多くみられさらに腫瘍なども観察された。DKO群における動脈硬化面積の縮小はこの酸化LDL受容体が血管内皮やマクロファージにも発生している為と考えられ、今後は臓器特異的ノックアウトを用いての研究へと発展させたい。
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