研究課題
本研究は、ヘパリン修飾温度応答性表面に増殖因子や接着タンパク質など種々の基底膜成分を温度応答性培養表面上に導入することにより、基底膜を模倣した温度応答性培養表面の調製および高機能な肝細胞シートの作製を目標とする。今年度はまず、ポリスチレン製ヘパリン修飾温度応答性培養表面の特性解析を行った。水晶振動子マイクロバランス法およびELISA法を用いた解析により、20℃および37℃におけるHB-EGF／固定化ヘパリン間のアフィニティーはほとんど変わらず、温度変化の影響は小さいことがわかった。HB-EGF固定化ヘパリン修飾温度応答性表面とEGF受容体間のアフィニティーを解析するために、温度を変えた時のラット肝細胞接着率を可溶EGF存在下で評価した。20℃のとき肝細胞はHB-EGF固定化表面にほとんど接着しないのに対し、37℃になると、接着率約6%の弱い初期接着を示すことがわかった。さらに、可溶EGF濃度の増加とともに細胞接着率が低下した。これは、37℃では固定化HB-EGFと肝細胞EGF受容体とのアフィニティーが働くことを示唆している。さらに、低温時の温度応答性高分子鎖の水和・膨潤に伴う立体障害増加の影響で、細胞との相互作用が減弱することがわかった。続いて、柔軟な温度応答性培養基材を作製するために、ポリジメチルシロキサン（PDMS）等のプラスチック製基材表面に共有結合で固定可能な、光反応性温度応答性高分子を作製した。具体的には、可視光反応性のカンファーキノンを側鎖に有する温度応答性高分子を合成した。本手法を用いることで、柔軟なPDMS表面上に温度応答性高分子層を形成することができ、培養肝細胞の機能を維持したまま、温度低下のみによる肝細胞シート回収への応用が期待される。
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Journal of Biomaterials Science, Polymer Edition
巻: 28 ページ: 939～957
10.1080/09205063.2017.1295508
