研究課題
平成27年度は、既存の発現プラスミドを用いて人工エラスチンポリペプチドを大量生産し、抗HIVペプチドの徐放化薬物担体として精製した。分子量約60kDaのモノマーユニットからなる人工エラスチンゲル2種について、3種のペプチド薬(A,B,C)について抗HIVペプチド含有デポを調製し、in vitroおよびin vivoでの薬物リリースを定量的に解析した。1. 薬物の徐放パターンは人工エラスチンの体積相転移前後で大きく異なった。低温ではCys残基の導入率が大きい、すなわち分子間架橋が起こりやすい人工エラスチンゲルほど、ハイドロゲルからの薬物リリースが遅くなる傾向を認めた。一方、体温付近の高温では初期バーストの後にゆっくり1次放出が起こるもの、その後はリリースが全く起こらないものなど、抗HIVペプチド薬の組成・分子量によって多様な薬物放出プロファイルを示した。ハイドロゲルの組成や架橋度との関係性の解析が待たれる。2. より疎水性度の高い人工エラスチンに、抗HIV活性を保持したペプチド薬Aおよびペプチド薬Bの貯留が可能であった。ペプチド薬Cについては初期バーストが大きく、今回調製した人工エラスチンゲルによるデポ製剤化には不向きであった。3. ペプチド薬Aに関してラットに皮下投与し、ペプチド単独および人工エラスチンゲルによるデポ製剤投与の場合とを比較しながら、ペプチド薬Aの血中濃度をHPLCでモニターするとともに、血清の抗HIV活性をMTT assayにて測定した。その結果、抗HIV活性を保持したペプチドの貯留が可能であり、単独皮下投与と比較して、デポ製剤には最高血中濃度に達する時間の延長が認められることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、(1)ポリペプチドの設計・調製と、(2) 試験管内 (in vitro)および(3)動物血中 (in vivo)での活性評価の3つを、首尾よく互いにフィードバックできる実験系と環境をいかに構築できるかが鍵を握る。(1)に関しては、本年度は遺伝子レベルでの抗HIVペプチド遺伝子モジュールライブラリー構築に順調に着手できた。(2)は既に当講座内でルーチンワーク化しており、本年度は(3)の動物試験評価系構築に焦点を当てた。これにより今後、ペプチドを高分子化して多機能化したバイオ高分子について、抗HIV活性を評価する見通しがついたことが大きい。
申請者がこれまでに取り扱ってきた抗HIVペプチドを中心として、近年になって報告されたペプチドも含め、異なる作用メカニズムをもつ種々のペプチドを人工遺伝子としてクローニングし、より多彩なライブラリー構築を目指す。次年度は、このライブラリーの中からまずは同種のペプチドをタンデムに連結したポリペプチドを設計・調製し、抗HIV活性に対する多価効果の有無とその程度を解析予定である。
H27年3月に計画していた実験に必要な試薬の国内在庫が無くなり輸入手配となり、当月中の納品が不可能となったため。
年度明け早々に入荷され、これに全額4,371円を充当する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
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http://www.marianna-u.ac.jp/microbiology/