研究課題/領域番号 |
15K01321
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
柚木 俊二 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 主任研究員 (20399398)
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研究分担者 |
安田 和則 北海道大学, -, 理事・副学長 (20166507)
近藤 英司 北海道大学, 医学研究科, 特任教授 (60374724)
大藪 淑美 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 副主任研究員 (80587410)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人工腱 / コラーゲン / 線維 / 配向 / 紡糸 |
研究実績の概要 |
平成28年度 ■高強度3次元ハイブリッド人工腱の量産: 平成27年度に開発したゲル紡糸技術(ゲル状の配向コラーゲン線維束を連続紡糸する技術)を発展させ、内径が10G、13G、および18Gのステンレス管から内径を制御したゲル紡糸を行った。リザーバーのコラーゲン液が枯渇するまで破断が生じない連続紡糸の条件を解明した(全長5 mを超えるゲルファイバーを得た)。内部の配向を走査型電子顕微鏡で確認したのち、それぞれのゲルファイバーを乾燥し、内径が463±81 μm、248±37 μm、および102±12 μmのコラーゲンファイバーを得た。 並行して、公知の湿式紡糸に対する優位性を明らかにする実験を行った。湿式紡糸ではノズルから吐出された酸性コラーゲン溶液の表面から凝固が徐々に内部へと移行する機序で紡糸されるため、吐出コラーゲン液の径が太くなるほど紡糸が困難になることを明らかにした。ゲル紡糸技術の優位性が線維の配向化であることを平成27年度に明らかにしたが、それに加えて、ファイバー径の制御が可能であるもう1つの優位性を湿式紡糸との比較により明確化した。 ゲル紡糸により作製した内径の異なる3種類のファイバー(太、中、および帆細)をそれぞれ5回、9回、および54回ループすることにより、全体のサイズが内径3mm×長さ25mmであり内部のfascicle密度が異なる人工腱を3種類作製した。熱架橋により人工腱を安定化・滅菌したのち、医学側へと提供した。 ■ハイブリッド人工腱の組織再構築現象に関する統合的評価: 細胞培養系による人工腱への細胞浸潤性評価がサンプル形状の影響で再現しなかったので、兎膝蓋腱への埋植実験の予備試験として、上記3種類の人工腱のラット皮下への埋植実験を2017年3月に実施した。現在、組織学的評価を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度に新規ゲル紡糸技術を開発し、医療用コラーゲンの連続紡糸に道筋をつけたが、内径を変えることにより内部の配向化が変化することが明らかになり、その課題解決に時間を要した。平成28年度のうちに課題解決に成功し、コラーゲン線維が配向化した人工腱の医学側への提供が可能になった。 一方、当初は細胞浸潤性を細胞培養系で評価する予定であったが、コラーゲンファイバーを束化し、そのファイバー密度を変えたサンプル間で細胞播種の状態を同じくすることが技術的に困難であることが判明した。in vivoでの細胞浸潤性評価を行うべきと考え、家兎皮下への埋植実験を完了した。間もなく埋植標本を摘出して組織学的および生体力学的評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までにコラーゲン線維が配向したファイバーの量産技術を開発し、ファイバーを束化した人工腱の量産が可能になった。計画していた兎膝蓋腱への埋植実験を行うための前提条件が整ったので、平成29年度では、計画通り、腱への埋植実験を行い、力学試験・組織学的評価等の評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コラーゲン溶液(50,000円/本)の追加購入を希望していたが、残金が50,000円未満となったため所内研究予算で購入したため残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ガラス器具・プラスチック製品等の実験用消耗品として使用する。
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